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ブラックホールを人工的に作ることは可能?

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欧州原子核研究機構(CREN)は、高エネルギー物理学の実験を目的とした大型ハドロン衝突型加速器(LHC)を2008年に建設しました。このLHCは世界最大の加速器であり、円周が27キロメートルもあります。 ここでは高速の陽子と陽子を衝突させ、新たに発生する素粒子の特性や振る舞いを研究します。大統一理論や超対称性理論の検証も期待されています。 ヒッグス粒子やダークマターも検出されるかもしれません。



猛スピードの陽子と陽子を衝突させると、衝突のエネルギーでマイクロブラックホール(微小なブラックホール)が誕生すると考える研究者が一部にいます。マイクロブラックホールは文字通り極めて小さなブラックホールでシュバルツシルト半径が素粒子程度しかありません。



マスコミがこれを「ブラックホールを作る実験」として報じたところ、マイクロブラックホールによって、地球が呑み込まれてしまうことを心配する人々が現れました。LHCの実験を中止するように申し入れた市民団体もあり、その中の一部では訴訟にまで発展しました。 これに対しCERNは、この実験の安全性を検証するためにノーベル物理学賞受賞者らでつくる委員会に調査を依頼しました。



ブラックホールはホーキング放射によって徐々に小さくなりやがて消滅します。ホーキング放射はブラックホールの質量に反比例して激しくなるので、ブラックホールが小さいほど、消滅までの時間が加速度的に短くなります。LHCでマイクロブラックホールができたとしてもすぐにホーキング放射で消滅してしまうでしょう。



さらに一部では、マイクロブラックホールが安定して存在すると考える人もいます。しかし仮に安定してマイクロブラックホールが存在したとしても、素粒子程度のサイズでは、周囲の物質を大量に吸収することはできません。



LHCによる荷電粒子の衝突でマイクロブラックホールが生まれるなら、より強力なエネルギーを持つ宇宙線の衝突でもマイクロブラックホールが頻繁に誕生しているはずです。地球が誕生して45億年経ちますが、現在もなお存在しているということは、マイクロブラックホールによる地球の吸収はなかったということです。LHCの実験で地球が消滅する心配はまったくありません。



なお、CRENはインターネットでおなじみのWWW(ワールド・ワイド・ウェブ)を開発した研究所としても有名です。

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参考文献・サイト

福江純/著「カラー図解でわかる ブラックホール宇宙」ソフトバンククリエイティブ, 2009
「ブラックホールと超新星」ニュートンプレス,2010

2011/07/12
2015/06/06



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