回転するブラックホールの周囲では何が起こる?
静止限界とエルゴ領域
物体の周囲は質量に応じて時間と空間(合わせて時空といいます)が歪みます。天体は質量が大きいので歪みが大きく、これが重力となって現れます。ブラックホールは狭い範囲に大量の質量が集中しているので、時空の歪みも大きくなります。もしブラックホールが自転していたら、周囲の時空も引きずられることになります。自転するブラックホールをカー・ブラックホールといい、その周囲は時空の歪みが渦のようにブラックホールを取り巻いています。
ここではカー・ブラックホールの特徴を見てみましょう。宇宙船がカー・ブラックホールに近づいていきます。この宇宙船はブラックホールからの重力を受けますが、同時に時空の歪みの渦によって横方向からも力を受けます。横方向からの力によって、宇宙船はカー・ブラックホールの周囲を回転するので、同じ位置に留まりたいなら、反対方向にロケットを噴射しなくてはなりません。
さらに宇宙船がカー・ブラックホールに近づくと、時空の歪みの渦はさらに強くなるので、渦に逆らって静止するにはロケットの噴射をより強くする必要があります。もう少しカー・ブラックホールに近づくと、どんなにロケットを噴射しても、渦の勢いが強すぎて同じ場所にとどまれない限界に達します。この限界を静止限界といいます。
静止限界内では時空の歪みの渦に押し流されて、宇宙船はカー・ブラックホールの周囲を回転してしまいますが、事象の地平面より手前なのでブラックホールから離脱することは可能です。 事象の地平面と静止限界に囲まれた範囲をエルゴ領域といいます。
カー・ブラックホールは回転しているので遠心力が働き、エルゴ領域は赤道で最も膨らみ、極点で事象の地平線と重なります。
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参考文献・サイト
福江純/著「カラー図解でわかる ブラックホール宇宙」ソフトバンククリエイティブ, 2009
「ブラックホールと超新星」ニュートンプレス,2010
2011/07/12
2015/06/06