水蒸気に囲まれたブラックホール
2011年7月、やまねこ座のクエーサーの周囲で大量の水が発見されました。このクエーサーはAPM 08279+5255と呼ばれており120億光年先にあります。この発見で地球の海の140兆倍の水を含んでいることが分かりました。これほど遠方の宇宙で大量の水が発見されたことはかつてありません。
120億光年先の天体は、120億年前の姿です。宇宙が誕生して10数億年後にこれほどの大量の水があったのです。 銀河系内にも水は多く含まれていますが、このクエーサーの水分は銀河系の4000倍もあります。
このクエーサーの中心部には太陽質量の200億倍のブラックホールが潜んでおり、その周囲数100光年の範囲をガスが取り囲んでいます。発見された水は水蒸気の状態で、このガスに含まれています。このガスの温度はマイナス53度程度と見積もられています。ずいぶんと低い温度に感じられますが、宇宙空間のガスの中では非常に高温の部類です。
中心のブラックホールは、周囲のガスを吸収することで大きく成長していきます。 周囲のガスはブラックホールに落ち込むときにエックス線などの強力なエネルギーを放射します。120億光年の遠方にありながら、クエーサーがこれほど明るいのは、このエネルギーがあるからです。 水蒸気はガスとともにブラックホールにすべて吸い込まれてしまう運命ですが、このときブラックホールの質量は6倍になっていることでしょう。
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参考文献・サイト
福江純/著「カラー図解でわかる ブラックホール宇宙」ソフトバンククリエイティブ, 2009
「ブラックホールと超新星」ニュートンプレス,2010
2011/07/12
2015/06/06