事象の地平面を語る。
事象の地平面とは
光が出られなくなる限界が事象の地平面
ブラックホールはあまりにも強力な重力によって、質量が一点に集まり無限に小さくなった天体である。
ブラックホールの周囲には、ある距離より近づくと、二度とこの世に戻って来ることができなくなる限界がある。
この限界を事象の地平面という。
事象の地平面は物理的な表面ではない。
事象の地平面の内側と外側では空間が連続しているので、そこに特別な面があるように見えないのだ。
事象の地平面に入っても外側を見ることができすだろうが、もう外に出ることは不可能であり、質量が集中した中心(特異点)に向かって引き寄せられていく。
事象の地平面より内側に入った宇宙船は、どんなに強力なエンジンを持っていたとしてもブラックホールから脱出することは不可能だ。
事象の地平面の内側からは光の速度でも脱出できない。この世に光よりも速い物体はあり得えないので、宇宙船では絶対に事象の地平面の内側から元の世界に戻れないのだ。
事象の地平面に入るとどうなるか
さらにやっかいなことに、事象の地平面には、すぐに分かるような目印がない。
事象の地平面の内側と外側は、何の変化もなく連続している。遠い未来の宇宙飛行士は、うっかり事象の地平面の内側に入ってしまわないよう気をつけねばならないだろう。
太陽ほどの質量を持つブラックホールであれば、事象の地平面を超えてから数分間で特異点(ブラックホールの中心)に到達する。
しかし、その前に宇宙船は粉々に破壊され、素粒子まで分解されてしまうことだろう。
宇宙船の先頭がブラックホールの中心に向けているとすれば、宇宙船の先頭は後端よりブラックホールに近いのでより大きな重力を受けることになる。
ブラックホールの重力は極めて大きいので宇宙船の先端と後端で受ける重力の大きさの差も極端に大きなものになり、これによって宇宙船は前後に引き裂かれてしまうのだ。
地平線の向こう側が見えないように、事象の地平面の先を見ることはできない。
事象の地平面から光が出ることができないので、どうなっているのか知ることができない。
事象の地平面で時間が凍る
ブラックホールに落ちていく宇宙船をブラックホールから十分に離れた安全な場所から見てみよう。
重力が強いと時間が遅く進むので、事象の地平面に近づくにつれ宇宙船で経過する時間がどんどん伸びていく。
だから、安全な場所からは宇宙船がスローモーションで動いているように見えることだろう。
もし、この宇宙船が1秒ごとに電波でピッ、ピッ、ピッと信号を発した場合、安全な場所では、ピッ、ピッ、ピッの間隔がだんだんと長くなっていくはずだ。
やがて宇宙船が事象の地平面に到達するが、それまでには無限の時間が必要だ。
安全な場所からは、事象の地平面で時間の経過が止まっているように見えるので、宇宙船は事象の地平面からまったく動かないように観測される。
これを時間が凍りつくと表現する。
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参考文献・サイト
福江純/著「カラー図解でわかる ブラックホール宇宙」ソフトバンククリエイティブ, 2009
「ブラックホールと超新星」ニュートンプレス,2010
Black Holes
Black hole monster in a spin releases energy!
Where are the supermassive black holes hiding?
2011/07/30
2015/06/07