人工衛星の軌道要素を語る。
人工衛星の軌道要素とは
軌道を決める6つの要素
人工衛星が周回するコースを軌道という。
軌道の形は、人工衛星ごとに違っている。
真円の軌道もあれば、極度な楕円軌道もある。
常に、地球の赤道上を通る軌道もあれば、傾いた軌道や南北極点上空を通過する軌道もある。
人工衛星は、打ち上げる以前に、どのような軌道に乗せるかが決まっている。
とりあえず打ち上げて、行き当たりばったりの軌道投入はない。
事前に決めた軌道に乗るように、綿密に計算して人工衛星を打ち上げるのだ。
綿密に計算するためには、軌道を計算しやすい形で表現する必要がある。
この「軌道を計算しやすい形の表現」を軌道要素という。
例えば、グラフ上の点の位置を「計算しやすい形で表現」したものが、X座標とY座標だ。
X座標とY座標を指定するこによって、点がどこにあるのかが表現できるのである。
X座標、Y座標が座標の要素なのである。
人工衛星の軌道は、
大きさも様々、
楕円の度合いも様々、
傾きも様々、
傾いている方向も様々
である。
とても、X座標、Y座標の二つの要素だけで、人工衛星がどこにいるのかを表現することはできない。
座標の要素が二つであるのに対し、人工衛星の軌道は、6個の要素で表現する。
この6個を人工衛星の軌道要素という。
要素 | 記号 | 意味 |
昇交点黄経 | Ω | 「軌道面と赤道面の交線」と「春分点の方向」の角度 |
軌道傾斜角 | i | 「軌道面」と「赤道面」の角度 |
軌道長半径 | a | 軌道の長半径 |
軌道離心率 | e | 楕円の形状。0〜1の数値で楕円の度合いを示す |
近日点引数 | ω | 「昇交点」と「軌道の近日点方向」の角度 |
元期の平均経度 | ε | 人工衛星がいる位置を表す角度 |
楕円
軌道の種類と軌道要素
静止軌道
赤道上空の軌道で、人工衛星は常に同じ経度の上空にいる。
軌道傾斜角は0度、真円の軌道のため離心率=0となる。
極軌道
南北極点上空を通過する軌道である。
軌道傾斜角は90度または270度になる。
90度の場合が順行、270度の場合が逆行である。
TLE
人工衛星の軌道6要素を表現するためのフォーマットがTLEだ。
Two Line Elements[2行の軌道要素]の略である。
各国のほぼすべての人工衛星の軌道要素が、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)によって公開されている。
この情報がTLEの形式で提供されるのだ。
情報収集衛星の軌道要素とTLE
日本が情報収集衛星(スパイ衛星)を打ち上げたとき、軌道要素は秘密扱いであった。
ところが、日本政府が事前に要請していなかったため、NORADがこの情報収集衛星のTLEを公開してしまった。(後日削除された)
一部の素早い人工衛星マニアが削除前に軌道要素を入手し、日本のスパイ衛星の写真撮影にも成功したという。
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参考文献・サイト
NASA
AMSAT:Keplerian Elements Tutorial
celestrak
2009/02/06