ブラックホールのＱ＆Ａ

トップページ＞天文宇宙のＱ＆Ａ＞ブラックホールのＱ＆Ａ＞023

ちょっと変わったブラックホールは？

水蒸気に囲まれたブラックホール

2011年7月、やまねこ座のクエーサーの周囲で大量の水が発見されました。このクエーサーはAPM 08279+5255と呼ばれており120億光年先にあります。この発見で地球の海の140兆倍の水を含んでいることが分かりました。これほど遠方の宇宙で大量の水が発見されたことはかつてありません。

120億光年先の天体は、120億年前の姿です。宇宙が誕生して10数億年後にこれほどの大量の水があったのです。 銀河系内にも水は多く含まれていますが、このクエーサーの水分は銀河系の4000倍もあります。

このクエーサーの中心部には太陽質量の200億倍のブラックホールが潜んでおり、その周囲数100光年の範囲をガスが取り囲んでいます。発見された水は水蒸気の状態で、このガスに含まれています。このガスの温度はマイナス53度程度と見積もられています。ずいぶんと低い温度に感じられますが、宇宙空間のガスの中では非常に高温の部類です。

中心のブラックホールは、周囲のガスを吸収することで大きく成長していきます。 周囲のガスはブラックホールに落ち込むときにエックス線などの強力なエネルギーを放射します。120億光年の遠方にありながら、クエーサーがこれほど明るいのは、このエネルギーがあるからです。 水蒸気はガスとともにブラックホールにすべて吸い込まれてしまう運命ですが、このときブラックホールの質量は6倍になっていることでしょう。

宇宙最初期の巨大ブラックホール

エックス線観測衛星チャンドラの調査によって、宇宙の最初期にも大型のブラックホールが大量に存在していたことがわかりました。

宇宙の誕生後、わずか8億年から9億5000万年の間の時代の銀河を200個調べたところ、少なく見積もっても30％以上の銀河が巨大質量ブラックホールを含んでいることがわかりました。これは初期の宇宙では、全天で3000万個のブラックホールが存在していたことになります。

初期の巨大質量ブラックホールは厚いガスやチリに包まれているため、光学望遠鏡ではなかなか検出できません。X線はエネルギーが強いのでこのようなガスやチリを貫いてしまいます。

銀河とその中心のブラックホールは、同じペースで成長していくことが比較的近い銀河で確認されていますが、この傾向が初期の銀河でも同じことが言えることがわかりました。

宇宙の初期には大量の水素ガスがありました。これらの水素ガスはこのような巨大質量ブラックホールに吸収されたのかもしれません。

このページのTOPへ