相対性理論のQ&A
光の速度は常に一定なの?
時速300キロメートルで走る新幹線を、時速100キロメートルで追いかける自動車から見たら、新幹線の速度は時速200キロメートルに見えます。地面から見る人と自動車に乗って追いかける人では、新幹線の速度は違って見えるのです。 では、同様に秒速30万キロメートルの光を、秒速10万キロメートルのロケットから観測したら光の速さは秒速20万キロメートルに見えるのでしょうか?
光の速度には極めて不思議な特徴があります。観測者が止まっていても、猛スピードで動いていても光の速度は常に一定に見えるのです。 ここでは、光の速度が一定であることを発見するまでの歴史を見てみましょう。
古くから光は波なのか、はたまた粒子なのか、という議論がありました。ニュートンは光の正体は粒子であると考え、ホイヘンスは光は波動であると主張しました。粒子説と波動説の対立は長く続きましたが、波動説には大きな弱点がありました。それは波を伝える物質が見つからないということです。
海の波は海水の振動が伝わる現象です。海水がなければ波は生じません。音も空気を伝わる振動なので空気がなければ音は発生しません。波は水や空気のような物質がなければ、存在できないのです。
光が波であるなら、光を伝える物質があるはずです。波動説の支持者は、宇宙には光を伝える物質が充満していると考え、この物質をエーテルと呼びました。 粒子説の支持者はエーテルが見つからないことを根拠に、波動説を攻撃しました。
19世紀になるとヤングが実験によって、光の正体が波であることが明らかになりました。これを機にエーテル探しが本格的に始まります。
宇宙がエーテルで満ちているならば、地球はエーテルをかき分けながら太陽の周りを公転しているはずです。
このとき、地球が進んでいく方向はエーテルの向かい風を受けるので、この方向から来る光の速度は他の方向より速くなるはずです。マイケルソンとモーレーは方向による光速の差を検出する実験を行い、エーテルの存在を証明しようとしました。
ところが出てきた実験結果は、エーテルの存在を否定するものばかりでした。 どの方向を観測しても光速の差は認められなかったのです。
マイケルソンとモーレーは、この結果を実験精度による誤差と考えました。機器に改良を重ね数年間に渡って実験を繰り返しましたが、結局は光速の差は検出されませんでした。光速の差がないことはエーテルが存在しないことを意味しています。
マイケルソンとモーレーは、エーテルの証拠探しに生涯をかけ、エーテルが存在しないことを証明したのです。 光は媒質なしに進む波動だったのです。
マイケルソンとモーレーの実験のポイントは、エーテルの存在を否定したことではありません。光の速度が常に一定であることを示したことにあります。
これを光速度一定の原理といいます。光速度一定の原理が相対性理論の出発点になりました。
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参考文献・サイト
佐藤勝彦/監修「最新宇宙論」学研,2009
「ニュートン別冊 相対性理論」ニュートンプレス,1991
真貝寿明/著「タイムマシンと時空の科学」ナツメ社,2011
佐藤勝彦/著「相対性理論を楽しむ本」PHP文庫,2011
2012/08/02