相対性理論のQ&A
何で時間がのびるの?
相対性理論は今まで不変と思われていた時間が延びてしまうことを示しています。なぜ時間が延びるのでしょうか? それは、どんな状況でも光の速度は絶対に変わらないからです。
19世紀にマイケルソンとモーレーが行った実験により、光速が常に一定であることが分かりました。同じ光を止まっている人と、猛スピードで走る人から同時に見たとします。しかし、光の速度は見る人のスピードに無関係に必ず同じなのです。
光の速度が一定だと、なぜ時間の過ぎ方が一定でなくなるのでしょうか?
ここでは鏡と電球を使った装置で実験してみましょう。 この実験装置では電球と鏡が向かい合っていて、電球から光が放たれ、鏡に反射して戻ってくると時間が表示されます。
ちょうど「1秒」と表示するためには、鏡を15万キロ離す必要があります。 光は一秒間に30万キロ進むので、15万キロ先で反射させればちょうど1秒になります。 操作係がスイッチを入れると、電球が一瞬だけ光ります。この光は15万キロ先の鏡まで進み反射して電球まで戻ってきます。これが一秒です。
この実験装置を猛スピードで飛ぶロケットの貨物室に載せて実験してみましょう。操作係も一緒に乗り込みます。 操作係がスイッチを入れると、光は15万キロ先で反射して戻ってくるので1秒と表示されます。ロケットに乗せて実験しても、地上で実験しても同じ結果になりました。
では、ロケットに乗せた実験装置を、地上にいる見学者から見たらどうなるでしょうか?光が実験装置の中を移動している間に、実験装置そのものがロケットに乗って移動します。このため、見学者から見ると、実験開始から光が一往復するまでの間に実験装置は動いてしまっているのです。
電球と鏡の間は15万キロですが、ロケットの移動が加算されるので光は15万キロ以上の距離を移動して鏡に到達します。反射した光も15万キロ以上を移動して電球に戻ります。つまり、見学者は光が30万キロ以上を移動するのを目撃するのです。
さて、光のスピードは誰から見ても一定ですから、地上の見学者にとっても光速は秒速30万キロです。秒速30万キロで30万キロの距離を移動すれば、所要時間は1秒ですが、30万キロ以上の距離を移動すれば、それは1秒よりもっと時間がかかります。
ロケット内の操作係から見ると、光は一秒で往復します。その様子を地上の見学者からは1秒以上の時間がかかって往復して「1秒」と表示されるのが見えるのです。 1秒間の動作を1秒以上の時間に引き延ばすのですから、観客は実験装置の動作や実験係の動きがスローモーションのように見えるはずです。見る人の状況によって時間の進み方は違ってくるのです。
では反対に、地上に設置した実験装置を猛スピードで飛ぶロケットから見たらどうなるでしょうか?反対に速く見えるのでしょうか?
走っている電車からホームを見ると、電車が止まっていてホームが動いているように見えます。これと同じで、ロケットから見ると地上に設置した実験装置は移動しているように見えます。
電球と鏡の間は15万キロですが、地上の実験装置が移動して見える分が加算されるので光は15万キロ以上の距離を移動して鏡に到達し、15万キロ以上を移動して電球に戻ります。結局、ロケットからこの様子を見ると光の移動距離が伸びて見えます。つまり、ロケットからは光が30万キロ以上を移動するのを目撃するのです。
これは地上からロケットを見ても、ロケットから地上を見ても、相手がスローモーションに見えることを意味します。
ここから出てくる結論は、時間の経過はスピードによって異なり、誰にとっても共通な時間はないということです。
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参考文献・サイト
佐藤勝彦/監修「最新宇宙論」学研,2009
「ニュートン別冊 相対性理論」ニュートンプレス,1991
真貝寿明/著「タイムマシンと時空の科学」ナツメ社,2011
佐藤勝彦/著「相対性理論を楽しむ本」PHP文庫,2011
2012/08/02