相対性理論のQ&A
宇宙が平坦とか、開いているって何?
私たちにとって、人類が地球上で暮らしていることは常識ですが、はるか昔の人には、自分たちの住む世界がどうなっているのかは大きな謎でした。 ある人は果てのない平面を想像し、別の人は有限の平面を考えました。水平線が丸みを帯びていることから、世界が球形であると正しく洞察した人もいたことでしょう。
現在の私たちは宇宙全体を実感することはできませんが、想像力を駆使して宇宙の形をイメージすることは可能です。 イメージによって得られた宇宙の形を宇宙論モデルといい、開いた宇宙、閉じた宇宙、平坦な宇宙の3種類があります。
閉じた宇宙は昔の人が想像した球形の世界に相当します。球形の世界は、面積は有限ですが果てはありません。まっすぐに進んでいくとグルリと周って同じ場所に戻ってきます。もし、宇宙が閉じていたとすると、直進していくとやがて同じ場所に戻ってくるはずです。このモデルは、果てはないが限りはある空間です。
平坦な宇宙は、昔の人が考えたどこまでも続く果てのない大地に似ています。宇宙が平坦なら、行けども、行けども終わりがなく、決して同じ場所に戻ってくることはありません。
開いた宇宙をイメージすることは難しいかもしれません。閉じた宇宙のモデルが球体、平坦な宇宙が無限の平面だとしたら、開いた宇宙は乗馬で使用する鞍の形がモデルになります。果てはなく、限りもない空間です。
球体、平面、鞍型には、幾何学的な大きな違いがあります。それは三角形の内角の和です。中学の数学では三角形の内角の和は常に180度であると学習します。これは平面上の三角形の話であって、球体の表面の場合では180度になりません。 ボールの表面に三角形を書いてみれば分かりますが、内角の和は180度よりも小さくなります。
これとは反対に三角形の内角の和が180度を超えてしまうのが鞍型です。
球体も鞍型も表面は二次元ですが、形状が二次元に収まらないため3つめの次元に向かって曲がり立体になっています。 同じように閉じた宇宙(球体)や、開いた宇宙(鞍型)も空間は三次元ですが、宇宙の形状が三次元に収まらないため4つめの次元に向かって曲がっていると考えられます。曲がり方の程度を曲率といいます。
3つの宇宙論モデルのうち、実際の宇宙が開いているのか、閉じているのか、平坦なのかは、宇宙が膨張する勢いと宇宙に含まれる物質の量のバランスによって決まります。物質の量が多いと重力が宇宙の膨張を妨げようとするので閉じた宇宙になります。 反対に物質の量が少なければ、宇宙は内部の重力を振り切って膨張を続けるので開いた宇宙になります。 宇宙の中の物質の量が宇宙が膨張するスピードとうまくバランスしていれば、宇宙は開くことも閉じることもなく平坦になります。宇宙が平坦になる理論的な物質の密度を臨界密度、宇宙の物質の密度を臨界密度で割った値を密度パラメータといいます。一般に密度パラメータはΩ(オメガ)で表し、その値が1のとき宇宙は平坦になります。
宇宙論モデル | 開いた宇宙 | 平坦な宇宙 | 閉じた宇宙 |
二次元でのイメージ | 鞍型 | 平面 | 球体 |
三角形の内角の和 | 180度より小さい | 180度 | 180度より大きい |
曲率 | 負の値 | 0 | 正の値 |
密度パラメータ | Ω<1 | Ω=1 | Ω>1 |
宇宙の運命 | 収縮に転じる | 膨張を続ける | 膨張を続ける |
銀河の密度や質量を観測すると、宇宙の物質の密度は臨界密度に一致しているので、宇宙は平坦であると考えられています。
スポンサーリンク
参考文献・サイト
佐藤勝彦/監修「最新宇宙論」学研,2009
「ニュートン別冊 相対性理論」ニュートンプレス,1991
真貝寿明/著「タイムマシンと時空の科学」ナツメ社,2011
佐藤勝彦/著「相対性理論を楽しむ本」PHP文庫,2011
2012/08/02