相対性理論のQ&A
重力波とは何?
一般相対性理論は、重力の正体が時空の曲がりであることを明らかにしました。質量が大きいほど、時空の曲がり方は大きくなります。巨大な質量が移動するとその周囲の曲がった時空が波のように広がっていきます。これが重力波です。ちょうど船が水面を進むと波が立って広がっていく様子に似ています。
超新星の爆発や、ブラックホール、中性子性の連星系から重力波が出ていると考えられていますが、重力波は極めて微小な現象ですので、これを予言したアインシュタインでさえ、重力波は検出できないだろうと語っています。
ジョゼフ・テイラーとラッセル・ハルスによって連星パルサーの軌道周期が少しずつ短くなっていることが1974年に発見されました。これは重力波に乗ってエネルギーが持ちだされることで起こる現象で、一般相対論から算出される値に見事に一致していました。
このことから重力波が実在すると確証されるようになったのです。ジョゼフ・テイラーとラッセル・ハルスは、この業績によってノーベル物理学賞を受賞しました。これ以後、重力波を検出する試みが各地で行われていますが、いまだ直接検出されていません。
宇宙がインフレーションを起こしたときに重力波が発生したはずです。晴れ上がる前の宇宙はプラズマで満たされているため光が散乱します。このためマイクロ波背景放射をいくら細かく観測したところで、宇宙が晴れ上がる前の状態を光(電磁波)で見ることはできません。重力波を検出する技術が完成すれば、晴れ上がり以前の宇宙を重力波によって観測することが可能になるでしょう。
なお、ジョゼフ・テイラーとラッセル・ハルスに先だって、1969年にジョセフ・ウェーバーが銀河系の中心から来る重力波を検出したことを発表しました。 多くの追試が行われましたが再現できず、今日ではジョセフ・ウェーバーの発見は誤りだったと考えられています。
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参考文献・サイト
佐藤勝彦/監修「最新宇宙論」学研,2009
「ニュートン別冊 相対性理論」ニュートンプレス,1991
真貝寿明/著「タイムマシンと時空の科学」ナツメ社,2011
佐藤勝彦/著「相対性理論を楽しむ本」PHP文庫,2011
2012/08/02