月面で生き延びた微生物
アポロ12号が持ち帰った微生物
1969年に実施されたアポロ12号のミッションはピンポイント着陸であった。
狙った地点に精度よく着陸する技術を検証することが目的である。
その場所に選ばれたのが既知の海である。
サーベイヤー3号を調べる
アポロ12号のクルー。
遠くにアポロ12号
の着陸船が見える。
出展:NASA
既知の海にはその2年前に無人探査機サーベイヤー3号が着陸していた。
アポロ12号はサーベイヤー3号から180メートル離れた地点に着陸し、クルーが船外活動でサーベイヤー3号から約10キログラムの機器を取り外し回収したのだった。
地球への帰還後、サーベイヤー3号から回収された機器が分析された。
2年半の間に放射線と真空にさらされた機器にどのような影響があるのかを調べるためだ。
その結果、驚くべきことが報告された。
サーベイヤー3号の機器から、連鎖球菌が発見されたのだ。
連鎖球菌は乳酸菌の一種で地球上では決して珍しい存在ではない。
二年前に付着した連鎖球菌がサーベイヤー3号とともに打ち上げられ、その後、二年間の間、放射線と真空にさらされた月面で生き残っていたことになる。
宇宙検疫
月は真空であり、宇宙線量も多い。
そのような過酷な環境でも生き延びられることは衝撃である。
放射線は突然変異を引き起こす。
地球の微生物が宇宙船に付着し宇宙空間で突然変異によって毒性を獲得し、再び地上に戻ることもあり得ることである。
地球上でも、強酸や高温、極低温の世界で生存できる細菌が確認されている。
さらに人類はすべての微生物の知っているわけではなく、その生態は不明なことのほうが多い。
地上の微生物が宇宙船とともに宇宙に行き、突然変異を起こして地球に戻れば、おおきなリスクとなるだろう。
地球由来の微生物で月や惑星を汚染させないこと、また、宇宙から地球へ微生物を持ち込まないように管理することを宇宙検疫という。
今後の宇宙開発において、宇宙検疫はさらに重要になるだろう。
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2015/09/206