放射性年代測定法を語る。
放射性同位体とは
同位体と核種
化学の教科書や参考書を見ると周期表が載っており、そこには元素が番号順に並んでいる。
この番号が元素番号だ。
この元素番号は、発見順や名称のアルファベット順に決められたのではない。
陽子の数を元素番号としているのだ。
例えば、ある原子が陽子を8個持っていればそれは元素番号8で酸素を表している。
陽子が6個なら、それは元素番号6の炭素だ。
すべての元素は中心に原子核を持っている。
原子核は陽子と中性子から構成されている。
元素番号が同じでも(陽子の数が同じでも)、中性子の数が少しずつ違うケースが多い。
例として炭素を見てみよう。
陽子の数 | 中性子の数 | 質量数 | 名称 | 記号 |
6 | 5 | 11 | 炭素11 | 11C |
6 | 6 | 12 | 炭素12 | 12C |
6 | 7 | 13 | 炭素13 | 13C |
6 | 8 | 14 | 炭素14 | 14C |
6個の陽子を持っている元素は炭素だ。 このため炭素の元素番号は6となる。
ところが、炭素には中性子の数が異なる4種類のタイプがある。
同じ炭素でありながら、中性子の数が違う(つまり重さが違う)別の炭素が存在するのである。
このように、元素番号が同じで重さが異なる(中性子数が異なる)元素を同位体と呼ぶ。
炭素には4種類の同位体があるのだ。
また同位体のタイプを核種という。
陽子数と中性子数を合計して質量数といい、同位体を区別する場合は、質量数を元素名に言い添える。
炭素の同位体は、炭素11、炭素12、炭素13、炭素14の4つだ。
放射性同位体
これら同位体の中で、炭素11、炭素14は不安定である。
時間の経過とともに、自然に他の元素へと変化してしまう。
このような元素を放射性同位体と呼ぶ。
これに炭素12、炭素13は安定した元素である。
他の元素へと変化してしまうことはなく、いつまでもそのままでいる。
これが安定同位体だ。
放射性同位体は陽子の数と中性子の数がアンバランスなため、元素としては非常に居心地が悪い。
そこで、何とかバランスをとるために他の元素へ変化し安定しようとするのである。
炭素14の場合は、8個の中性子のうちの1つが壊れて安定化する。
中性子は、電子とニュートリノを放出して陽子になる。
電子はマイナスの電荷を帯びているので、電子が抜けた中性子はプラスを帯びて陽子になる。
陽子と中性子は別の粒子のように思えるが、そうではない。
核子が、条件によって陽子になったり中性子になったりするのである。
炭素14が持つ中性子の1つが壊れて陽子になると、陽子の総数は7になる。
陽子の数が変われば、すでに違う元素である。
陽子数が7個であれば、それは窒素だ。
炭素14は、電子とニュートリノを放出して窒素14に変化したのである。
ここで質量数「14」は変わっていない。
陽子と中性子の合計数が質量数であり、中性子が陽子に変化しただけなので、質量数に変化はないのである。
この反応を反応式で書いてみよう。
炭素14 → 窒素14 + 電子 + ニュートリノ
ここから炭素が異なる元素(窒素)に変換したことが読み取れる。
半減期
このような変換はどれくらいの頻度で、どのように発生するのだろうか?
ここに1兆個の炭素14があったとする。
次の瞬間に、1兆個すべてが窒素14に変化するのだろうか?
それとも少しずつ変換するのであろうか?
個々の炭素14が崩壊するタイミングはまったく予測できない。
ある炭素14は1分後に崩壊するかもしれないが、別の炭素14は1万年後に崩壊するかもしれない。
個々の炭素14の壊れ方には法則がないが、炭素14が大量に集まると法則が見えてくる。
炭素14の大集団があると、集団内の炭素14の数は少しずつ減少する。
集団内の個々の炭素14の崩壊がランダムに崩壊していくからだ。
最初にあった炭素14の数が、崩壊によって半分になるまでの時間は、常に5730年である。
2兆個の炭素14は5730年で1兆個になる。
5000億個の炭素14は5730年で2500億個になる。
放射性同位体が半減するまでの時間を半減期という。
炭素14の場合、半減期は5730年だ。
半減期は圧力や温度に無関係である。
放射性同位体は、周囲の環境に惑うことなくマイペースで淡々と崩壊していくのである。
半減期は核種によって異なっている。
秒単位から10億年単位まで、その長さは様々だ。
核種 | 半減期 |
炭素11 | 20.39分 |
炭素14 | 5730年 |
ウラン238 | 44億6800万年 |
常にマイペースを崩さず淡々と減少していく放射性同位体は、地学や考古学の分野でストップウォッチとして利用することができる。
このような活用法が放射性年代測定法である。
放射性年代測定法
炭素14年代測定法
ここでは炭素14を利用した炭素14年代測定法を解説しよう。
炭素14は主に成層圏で生成される。
宇宙線が大気圏に入ると気体分子と様々な反応を起こす。
このとき、反応で生じた中性子が窒素に衝突すると、炭素14と水素1が生じるのである。
この炭素14が対流圏内に入り、各所に循環するのである。
成層圏で生成される炭素14と、各所で崩壊していく炭素14の数は均衡している。
つまり大気中に存在する炭素14の量は一定なのだ。
呼吸や食物とともに生物の体内にも炭素14は侵入する。
体内で炭素14が崩壊しても、炭素14の数は変化しない。
呼吸や食物とともに新たな炭素14が摂取され、排泄されるからである。
ところが、生物が死ぬとそうはならない。
体内の炭素14は崩壊するが、新たに体内には入ってこない。
このため、遺骸の内部にある炭素14はどんどんと減っていく。
生物が死んでから5730年たつと、体内の炭素14は半分になる。
さらに5730年経過すると、さらに半分になる。
地層の中から掘り出された化石を調べ炭素14の量を調べれば、その生物が死んだ時期、つまりその地層ができた時期が分かるのである。
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参考文献・サイト
国立天文台・天文ニュース (419) 放射性元素による宇宙年令測定
earth science australia
Radioactive Dating
2009/03/19