接眼レンズ(アイピース)を語る。
アイピースとは
天体望遠鏡の光学系は、対物レンズ(対物鏡)と接眼レンズの組み合わせによって構成されている。
対物レンズ(対物鏡)と接眼レンズは互いの独立してはいるが、非常に密接に関連しており相性がある。
初期のガリレイ式やケプラー式の接眼レンズは、単一のレンズであった。
しかし、今日では二つ以上のレンズを組み合わせた接眼レンズが主流になっている。
複数のレンズを組み合わせることにより、視野の広さや収差を改善しているのだ。
接眼レンズの中で、対物レンズ(対物鏡)に近い側を視野レンズ、目に近い側をアイレンズという。
天体望遠鏡の接眼レンズは小さな筒状の部品に組み込まれている。
この筒状の部品をアイピースといい、簡単に交換できる構造になっている。
アイピースを見ると、「Or5mm」「K25mm」のような文字が書かれている。
これは、接眼レンズの光学形式(種類)と焦点距離を表している。
対物レンズ(対物鏡)の焦点距離を接眼レンズの焦点距離で割った値が倍率だ。
天体望遠鏡の倍率はアイピースを交換することで変えられる。
つまり、観測しながら、必要に応じてアイピースを切り替えることができるということなのだ。
接眼レンズの光学形式
販売されているアイピースは、複数のレンズから構成されている。
(学習用として一部に単一のレンズがあるようだが)
レンズの組み合わせを光学形式という。
光学形式には様々な種類がある。
天体望遠鏡のカタログを見ると、接眼レンズ(アイピース)には光学形式を示すアルファベットが記載されている。
「Or(オルソ)」「K(ケルナー)」「PL(プローゼル)」等がそれだ。
これらは、各社共通の名称であるが、メーカー独自の光学形式や名称のアイピースを販売しているケースもある。
アイピースの実物にも、「Or5mm」のような文字が書かれている。
これは「光学形式はオルソで、焦点距離は5mm」を表している。
以下のような光学形式がある。
ラムスデン
ラムスデンは、二枚の平凸レンズを組み合わせた接眼レンズだ。
凸側が向かい合うように配置されている。
最大の欠点である色収差のため、アイピースとしてはあまり出回っていない。
焦点位置が視野レンズの外側にあるので、十字線をおきやすい。
このため、ラムスデンはファインダーの接眼部に利用されるケースがある。
多少の色収差はファインダーなら許される。
ケルナー
ケルナーは、視野が広く色収差が低減されている。
中倍率以下に向く。
オルソスコピック
オルソスコピックは、オルソとも呼ばれているアイピースである。
収差も少なく、高倍率にも耐える。
エルフレ
エルフレは、見掛け視界が60度以上もあるアイピースである。
視野レンズとアイレンズの間に、もう一群が入った接眼レンズである。
視野が広いため、低倍率に向く。
ハイゲン
ハイゲンは、二枚の平凸レンズを組み合わせた接眼レンズだ。
視野レンズ、アイレンズともに、凸側が対物レンズを向くように配置されている。
ハイゲンとは、この接眼レンズの開発者ホイヘンスのことである。
ホイヘンスは、天体望遠鏡にこの接眼レンズを使用し、土星の輪を発見した。
接眼レンズのスペック
見掛け視界
アイピースをのぞいたときに、円形の視界が見える。
この円形の視界のサイズを見掛け視界といい、角度で表す。
これに対し、実際に見ている空の範囲を実視界という。
望遠鏡は、狭い実視界を、見掛け視界のサイズに拡大して観測する。
このことから実視界と見掛け視界の比が倍率であることが分かる。
アイレリーフ(アイポイント)
アイピースから目をゆっくり離していくと、周囲の像が見えなくなっていく。
像が完全に見えるためには、目がある距離よりもアイピースに近くなくてはならない。
この「ある距離」をアイレリーフ(またはアイポイント)という。
アイレリーフ(またはアイポイント)はmm(ミリメートル)で示す。
アイレリーフは大きい方が、見やすいアイピースだ。
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参考文献・サイト
ネタ元:Science@NASA
原題:Shooting Marbles at 16,000 mph
出展のリリース日:2007-03-14
2010/04/25