タイタン上空のジェット気流
ネタ元:ESA Cassini-Huygens website
原題:The jet stream of Titan
出展のリリース日:2007-01-24
ホイヘンスのタイタン着陸(2005年1月)から2年が経過した。
ホイヘンスはパラシュートによってタイタンの大気中を降下しながら、眼下の情景を撮影した。
そこには、期待されていたメタンの海洋はなかったが、侵食による地形などが確認された。
天体が他の天体を隠す現象を掩蔽という。
タイタン着陸の14か月前(2003年11月)、タイタンによる恒星の掩蔽が観測された。
タイタンは厚い大気の層を持つため、掩蔽が始まると同時に恒星の光がパッと消えることはない。
恒星の光は段々と弱まり、消えるのだ。
掩蔽の終了はこの逆で、恒星の光は段々と強まりやがて回復する。
大気が掩蔽に与える効果は他にもある。
掩蔽中の恒星の光は手前の天体に邪魔されて、地球には届かない。
ところがタイタンの場合、恒星の光は大気の層を通過しながら屈折する。
大気がレンズとして作用するからだ。
このため、掩蔽中に隠れているはずの恒星の光が見える瞬間がある。
このタイミングが掩蔽の中央に相当する。
時間の経過に対する恒星の明るさをグラフにすると、中央に突起のある皿状の形になる。
タイタンの大気が完全に均一で風もなく穏やかであれば、グラフは理想的な形状になる。
大気の循環があれば、グラフそれに応じて変形する。
グラフの形状を研究すれば、タイタンの大気の特徴を予測することができるのだ。
Sicardy氏らの研究によって、タイタンの北緯50度の上空には秒速200mのジェット気流が巡回していることや、地上510kmに温度の逆転層が存在することが判明した。
ホイヘンスの大気圏突入のミッションは、この結果を踏まえて再構築されたものなのだ。
降下中に得られたデータによると、予測通りの高度に温度の逆転層が存在したという。
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参考文献・サイト
2009/05/16