水星の氷を語る。
水星の大気は極めて薄いため、昼間の気温は400度にも達する。
このような温度では、水や氷はたちまち蒸発してしまう。
水星に水や氷が存在するとは考えにくいのだ。
アレシボ天文台の電波望遠鏡
出展:NAIC
アレシボ天文台の電波望遠鏡(左の写真)はレーダーとしても使用できる。
観測対象の天体に電波を放射する。
跳ね返ってきた電波をキャッチし解析することによって、観測対象の状態や形状を調べることができるのだ。
水星は内惑星のため観測の時間が限られる。
そのうえ、満ち欠けするので自転周期を測定することが困難であった。
この水星の自転周期が59日であることを特定したのがアレシボ天文台でのレーダー観測であった。(1964年)
このアレシボ天文台から水星に向けて電波を放ち、水星からの反射波をパラナル天文台のVLAで受信したところ、奇妙なことが分かった。
水星の南北両極付近には、特に電波を強く反射するエリアが存在するのだ。
水星は、ケイ素を主とした岩石などで電波を強く反射することはない。
したがって、このエリアは岩石以外のものが存在しているということになる。
岩石ではなく、電波を強く反射するものの最有力は氷だ。
南北両極には天然の氷があって、アレシボ天文台からの電波を強く反射していると予測された。
チョウモウフ[Chao Meng-Fu]クレーター、
この底に氷の層があるらしい。
出展:NASA NSSDC:Ice on Mercury
マリナー10号が撮影した水星表面の写真と照合すると、電波を強く反射するエリアのうちの一つはチョウモウフ[Chao Meng-Fu]というクレーターに一致することが確認された。
水星の自転軸の傾斜角(0.01度)はわずかだ。
このため、極地は水平方向から太陽光が照射されるので、深いクレーターの底であれば永久に日陰となる。
水星は大気を持たないので、そのようなクレーターの底では温度は常に低温だ。
どうやら、チョウモウフの底部に氷の層があるらしい。
なお、チョウモウフは、南宋-元の政治家「趙孟フ」に由来する。
(フは本当は漢字です。私の日本語環境で表示できませんでした。)
衝突した彗星や、太陽系創生の初期から水星の地下に含まれていた水が表出したものと考えられる。
2008年にはNASAの探査機メッセンジャーが水星に接近する。
水星の氷の存在についても新たな発見があろうだろう。
スポンサーリンク
参考文献・サイト
NASA NSSDC:Ice on Mercury
Comprehend the Cosmos!
2010/11/12