潮汐作用を語る。
潮汐力とは
月は常に同じ面を地球に向けている。
これは、月の公転周期と自転周期が一致しているからだ。
このような現象は潮汐作用によって説明される。
円軌道を公転する天体には、引力と遠心力が同時に作用する。
両者の方向は正反対であるが、大きさは同じだ。
つまり、引力と遠心力はお互いに打ち消しあい、合計はゼロとなる。
ところが、天体の大きさを考えると、この話は厳密ではない。
月の表側は地球に近いため、裏側に比較して引力を強く受ける。
一方で、月の裏側は地球軌道のより外側を回るため、表側に比較して遠心力が強くなる。
このため、引力と遠心力の合計はゼロとならない。
月の表側は引力が強く地球方向へ盛り上がり、裏側では遠心力が勝るから地球から遠ざかる方向へ引かれるのだ。
このため、月は球体から楕円体(ラグビーボールの形)へとわずかではあるが変形する。
このように、重力によって物体の手前と反対側が逆方向に引く力を潮汐力という。
また、潮汐力による効果を潮汐作用と呼ぶ。
潮汐力のメカニズム
表側の盛り上がりは、地球に近いので引力で強く引かれる。
この作用が、楕円体の長軸を常に地球の方を向かせようとするのだ。
これによって、自転周期が調整されて公転周期に一致してしまうのである。
地球も月から潮汐作用を受ける。
静止した地球の周りを月が公転しているイメージがあるが、これは誤りだ。
地球は、月と地球の共通の重心の周りを共に公転しているのだ。
当然、地球には月からの引力と、重心を回る遠心力がかかってくる。
月からの引力のため、月に近い側に海水が集まり海面が盛り上がる。
その反対側へも遠心力によって海水が流入する。
これが、潮の満ち干きのメカニズムである。
元々、潮汐とは「潮の満ち干き」の意味なのだ。
潮汐作用は海水だけでなく、地殻にも影響する。
地球も月に向かってわずかに楕円体に変形するが、自転が速すぎて長軸は月の方向からはずれてしまう。
月の引力は長軸を月の方向へ向けようと作用する。
これが、地球の自転速度にブレーキをかけている。
ジャイアントインパクトで月が誕生した当初、地球の一日は4時間程度であった。
現在、1日が24時間に延びたのは、このブレーキの影響である。
一方で、月の軌道半径も1年に3cmずつ広がっている。
月は年々遠くなっているのだ。
月の引力が地球の長軸に働くときに、月の公転を加速させようと作用する。
回転が勢いづくので軌道半径が広がるのである。
ロシュの限界
潮汐作用としてロシュの限界がある。
伴星が主星に近づくと、潮汐力で変形してしまう。
伴星が極端に主星に近ければ、潮汐力も大きくなるため、伴星は自分自身を支えられなくなる。
このため、伴星は破壊されてしまうのだ。
伴星が破壊されずにギリギリまで主星に接近できる限界をロシュの限界という。
潮汐作用の例
ガリレオ衛星
4つのガリレオ衛星もすべて木星に同じ面を向けている。
木星の強い潮汐作用によって、公転周期と自転周期が一致してしまったのだ。
シューメーカー・レヴィ第9彗星
シューメーカー・レヴィ第9彗星は木星に接近した際、ロシュの限界内に進入した。
このため、潮汐力を受けシューメーカー・レヴィ第9彗星は20個程度の破片に分裂した。
後日、これら分裂した破片は木星に衝突した。
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参考文献・サイト
2008/08/31