H-IIBロケットを語る。
H-IIBロケットとは
H-IIBロケットは、日本が開発した打ち上げロケットである。
JAXAは、正式にはH-IIBロケットであるが、報道では「H2Bロケット」と表記される。
2009年9月にHTVを搭載した1号機が打上げられた。
H-IIAロケットの技術をベースに、国際宇宙ステーション、月面への物資輸送にも耐えるように性能を向上させたロケットがH-IIBロケットだ。
H-IIAロケットと最大限の共通化率を図ることによって、維持管理のコストを低減しつつ信頼性を向上させようとする。
H2AとH2Bの比較
出展:JAXAS013:13ページ
開発中のHTV[宇宙ステーション補給機]は、重すぎるため従来のH-IIAロケットでは打ち上げることができない。
この問題はH-IIBロケットによって解決する。
H-IIBロケットの1号機はHTVの打ち上げを予定している。
H-IIBロケットが実用化されても従来のH-IIAロケットが廃止されるのではない。
H-IIAロケット、H-IIBロケットを適材適所で使用することにより、様々なミッションや商用打ち上げに対応する。
H-IIBロケットの役割
H-IIBロケットが担う役割は2つある。
HTV[宇宙ステーション補給機]の打ち上げと、H-IIAロケットとの併用によって多様な打ち上げニーズに対応することである。
ISSでのクルー滞在は長期に渡る。
そのため、必要な生活物資(食糧や衣類)、実験機器を定期的に届けなくてはならない。
この役割は、NASAのスペースシャトル、ESAのATV、ロシアのプログレスが担っている。
日本もISSに参加しているため、補給ミッションへの貢献が求められている。
これに応えるために開発された補給機がHTV[宇宙ステーション補給機]だ。
従来のH-IIAロケットでは、HTVを打ち上げることができない。
そこで、H-IIAロケット以上にパワーアップしたH-IIBロケットが開発されたのだ。
H-IIBロケットは、静止トランスファー軌道には8トン、地球低軌道には16.5トンの打ち上げ能力を持つ。
複数の衛星を相乗りして打ち上げることにより、衛星一機あたりの打ち上げコストを低減することができる。
H-IIBロケットの推進系統
H-IIAロケットの低軌道への打ち上げ能力は、最大限に増強しても約12トンまでである。
HTVは、総質量約16.5トンもあるためH-IIAロケットでは手に負えない。
これに対応するのが、H-IIBロケットだ。
H-IIAロケットでは、メインのエンジンにLE-7Aを一機使用していた。
H-IIBロケットの1段目は、LE-7Aを2機に増強する。
使用実績のあるエンジンを二機使用することで、パワーアップとコスト低減を狙っている。
このように、エンジンを複数束ねて使用することをエンジンのクラスター化という。
クラスター化した場合、二つのエンジンが同じように燃焼・動作しなくてはならない。
当然、エンジンには高い信頼性が要求される。
また、2機のエンジンが近すぎると、噴射が影響しあってしまい、意図した制御ができなくなる。
適切な距離でクラスター化する必要がある。
H-IIBロケットも、H-IIAロケットと同様に液体酸素と液体水素を組み合わせた推進剤を使用する。
しかし、推進力アップのため、H-IIBロケットでは積載量を1.7倍に増強した。
この影響で、4mだった第1段の直径も、5.2mと大型化している。
標準として、固体ロケットブースター(SRB-A)を4機装備するが、ミッションの内容によって増減する。
LE-7A
LE-7Aは、H-IIA、H-IIBの第1段目に使用されるロケットエンジンである。
H-IIロケットの第1段目に使用されたLE-7をルーツとする。
液体酸素(LOX)と液体水素(LH2)を推進剤にしている。
LE-5B
LE-5Bは、H-IIA、H-IIBの第二段目に使用されるロケットエンジンである。
液体酸素(LOX)と液体水素(LH2)を推進剤にしている。
LE-5Bは、H-Iロケットの第二段目に使用されたLE-5をルーツとする。
H-IIロケットの第二段では、改良型のLE-5Aが使用された。
LE-5BはH-IIAロケットから使用されている。
LE-5Bは旧宇宙開発事業団(現JAXA)が開発した。
三菱重工業、石川島播磨重工業が製造する。
SRB-A
打ち上げ時の推進力を補助するのがブースタだ。
固体燃料を使用していることからSRBと呼ばれる。
H-IIA、H-IIBでは改良型のSRB-Aが利用されている。
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参考文献・サイト
JAXA:H-IIBロケット
JAXA:新たな展開を迎える日本の宇宙輸送
JAXA:H-IIBロケット
2009/01/25