クレメンタインを語る。
1989年12月、マルタ島での会談により冷戦が終結した。
冷戦中は様々な軍事技術が培われた。
軍事衛星のための部品小型化もその一つである。
クレメンタイン
出展:NSSDC:Clementine
このような技術を科学的探査へと転用したミッションがクレメンタインだ。
このため、クレメンタインはNASAの他、国防総省も参画している。
クレメンタインの機体は非常に軽く(227kg)、小さい。
これは軍事的要請によって小型化が進んだ技術を利用することによって達成されたのである。
クレメンタインは1994年1月に打ち上げられ、第一目標の月に向かった。
クレメンタインは、可視光以外にも紫外光、赤外光で月面を撮影し、レーザー高度計による月面マッピングを実施した。
探査は約2か月間に渡って、周回軌道上から実施され、100万ショット以上の画像が撮影された。
1976年8月のルナ24号以来、月探査は20年近く途絶えていたがクレメンタインの活動により、広範囲に及ぶ月の地質、地形のデータが得られた。
その中でも最大の成果は、極地域のクレータの底部に氷の存在が示唆されたことだ。
極地域のクレータの底部は太陽光が永久に当たらないため、氷が数十億年に渡って保存されていると考えられる。
その後のルナ・プロスペクター、SMART-1による探査でも、氷の存在を示す決定的な確証は得られなかった。
氷発見の期待は、日本の「かぐや」、中国の「じょうが」、NASAのルナー・リコナイサンス・オービタとエルクロスにかかっていたが、2008年11月にエルクロスが氷の証拠を発見した。
月探査を終えたクレメンタインは、月周回軌道を離脱し第二目標の小惑星1620ジオグラフォス[Geographos]へ向かった。
ところが、移動中にスラスタ(ジェット射噴)が暴走し、クレメンタインは機体制御が不可能に陥った。
修復のための努力は払われたが、燃料を使い果たした時点でジオグラフォスの探査は断念しミッションは終了した。
現在もクレメンタインの行方はまったく分かっていない。
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参考文献・サイト
Solar System Exploration
NSSDC:Clementine Project Information
NSSDC:Clementine
The Clementine Mission
2009/11/19