ビーナス・エクスプレスを語る。
ビーナス・エクスプレスとは
ビーナス・エクスプレスは、ESAが運用する金星探査機である。
2005年11月9日にバイコヌール宇宙基地からソユーズロケットによって打ち上げられ、2006年4月11日に金星の周回軌道に到達した。
当初は500日間の観測を計画していたが、ミッションはたびたび延長され、燃料切れに不安定になった2014年12月16日まで継続した。
2015年1月18日の信号を最後に通信が途絶したが、これほど長期間に渡って金星を観測する探査機はビーナス・エクスプレスが初めてである。
ビーナス・エクスプレスは金星の大気の運動と成分、地表や太陽風との関係の調査を目的にしている。
火星探査機マーズ・エクスプレス、彗星探査機ロゼッタと部品の共通化が図られている。
2010年、ビーナス・エクスプレスにより金星の極地の大気は予測より薄いことが確認された。
ビーナス・エクスプレスが金星大気の上層すれすれを通過するとき、大気から摩擦を受け高度が下がる。
このときの量を調査することにより、大気の濃さを算出して結果、大気の密度が小さいことが分かったのだ。
また金星大気中の水素の観測から、かつて金星には大量の水が存在したことが予測され、地球と同じような規模の海が存在していたことも示唆された。
ビーナス・エクスプレスの観測機器
ビーナス・エクスプレスには、7つの観測機器が積まれている。
出典:Venus Express orbiter instruments
ビーナス・エクスプレスの観測機器
ASPERA
ASPERAは太陽風が金星の大気に作用する様子を調査する。
これにより、金星大気内の分子やイオンがどのように宇宙空間に逃げていくかが観測可能だ。
マーズ・エクスプレスの機器を利用している。
ASPERAはAnalyser of Space Plasma and Energetic Atomsの略だ。
MAG
MAGは、ビーナス・エクスプレス専用に開発された磁気計である。
金星は固有の磁場を持っていないが、太陽風と大気の相互作用により金星の周囲に磁気圏が形成されている。
MAGは、磁気圏を観測することによって、金星の大気を調査する。
PFS
PFSは、金星の地表や大気中の温度を測定する。
もし、火山活動があれば、PFSによってキャッチすることができるだろう。
マーズ・エクスプレスの機器を利用している。
PFSは、Planetary Fourier Spectrometerの略だ。
SPICAV/SOIR
金星の大気の成分を分析する。
特に少量だけ存在する水や酸素分子を調査する。
VeRa
電波を放ち、その反射を測定することによって、電離層の様子を調査する。
ロゼッタの機器を利用している。
VeRaは、Venus Radio Scienceの略である。
VIRTIS
金星の地表から高度40キロメートルの範囲の大気の組成を調査する。
また、赤外線、紫外線で雲の動きを追跡する。
ロゼッタの機器を利用している。
VMC
VMCは、近赤外線、紫外線、可視光線で撮影するための広角カメラである。
金星全体の雲の動きを撮影する。
マーズ・エクスプレスのカメラを改造した機器だ。
VMCは、Venus Monitoring Cameraの略である。
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参考文献・サイト
ESA:Venus Express
地球の風、金星の風 / 宇宙科学の最前線
金星探査機 PLANET-C / 科学衛星
2009/01/24
2010/10/18
2015/05/04