月震を語る。
月震とは
月でも地震は発生する
月で発生する地震を月震という。地球の地震に比較して月震は弱い。
地震計を設置するオルドリン氏(アポロ11号のクルー)
出展:NASA
アポロ計画によって地震計が月面に設置された。
アポロ11号が設置した地震計は早い段階で故障したが、アポロ12号以降の地震計は予定通りに機能した。
この結果、1969年から1977年までの間に、月面で発生した地震波が記録されたのだ。
月面でキャッチされた地震波のデータは電波で地球へと送られた。
月震の種類
これらの記録を解析した結果、月震には4タイプあることが確認されている。
- 深部月震[deep moonquakes]
- 隕石衝突による震動[vibrations from the impact of meteorites]
- 熱月震[thermal quakes]
- 浅部月震[shallow moonquakes]
深部月震(深発月震)
地球の地震はプレートテクトニクスによって発生する。
地球の地下は熱的に活発なので地震が発生するのだ。
一方で、月にはプレートテクトニクスがない。
熱的に活発でないのに月震が起こるのである。
当然、月震は地球の地震とは異なったメカニズムで発生しているのである。
深部月震は地下700kmから1000kmで発生する月震である。
地球の地震と比べると、この震源の深さは非常識だ。
Yahoo!天気情報の地震情報を見ると、最近の地震のデータが記載されている。
震源の深さはせいぜい50kmまでで、100kmを超えるような深度の地震はまず起こらない。
深部月震の震源は、地球の地震の10倍も深いのだ。
震源の深さを平均50kmとしたとき、地球の半径(6371km)に対する震源の深さの比率は0.78%となる。
地震は、ほとんど地表での現象なのだ。
深部月震の場合、月の半径(1700km)に対する震源の深さの比率は大きい。
40%から59%もある。
深部月震は半径の中間で発生するのだ。
深部月震は、潮汐力が原因と推定される。
隕石衝突による震動(隕石衝突月振)
隕石が月面に衝突したとき生じる振動も月震の一種である。
アポロ計画で設置された地震計でが179回が記録された。
その衝突の規模から衝突した隕石は500グラムから50キログラム程度の質量だと考えられている。
熱月震
熱月震は、昼夜の気温差によって生じる地震である。
月の昼夜の気温差は非常に激しい。
水も大気もないからだ。
地殻は気温に応じて伸縮する。
気温差が大きければ伸縮の幅も大きくなるため、地殻に加わる圧力も高くなる。
この圧力に耐え切れず、地殻が移動して月震が発生する。
温度差に起因した月震なので、熱月震という。
浅部月震(浅発月震)
浅部月震は20〜30km程度の地下を震源とする月震である。
震源が浅いだけに揺れは大きい。
浅部月震のメカニズムは不明だ。
月震の継続時間は長い
地球の地震の場合、揺れの持続時間は1分までだ。
ところが月震の揺れはしつこい。
10分から1時間ほどゆれが継続する。
地球の地殻は水分を含んでいる。
この水分がクッションとなって、地震の揺れを減衰させる。
だから、どんな大規模な地震であっても、揺れが2分以上継続することはない。
ところが月には、水分がない。
減衰させるものがないので、一度月震が発生すると、音叉のように震動が継続してしまう。
現在、NASAでは月面基地の建設を構想中だ。
月面基地では、月震の大きさよりも、揺れの継続時間が懸念となる。
持続時間の長い月震に対応するため、特殊な免震構造を持った建築物が必要になるだろう。
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参考文献・サイト
2010/11/21
2015/09/05