天王星のリングを語る。
天王星のリングは1977年に発見された。
「性能のよい望遠鏡で天王星を見たら、リングが見えました」という経緯ではない。
天王星のリングは、掩蔽によって発見されたのだ。
これは土星以外の天体でリングが発見された、初のケースである。
掩蔽とは天体が他の天体を隠す現象を言う。
日食も月による太陽の掩蔽と考えていいだろう。
1977年03月10日に天王星が、SAO 158687という恒星を掩蔽した。
この掩蔽を観測したのが、カイパー空中天文台だ。
掩蔽が起こると、背後の恒星の光が消失する。
天王星は大気を持っているので、掩蔽時の背後の恒星は、パッと消失せず時間をかけて減光する。
カイパー空中天文のチームは、この減光の特性を観測し天王星の大気を調べようとしていたのだ。
ところが、掩蔽がスタートする前から恒星が5回減光したのだ。
掩蔽後も同様に恒星が5回減光した。
この観測結果から、天王星の周囲は5重のリングによって、取り巻かれていると分かったのである。
天王星のリングは、天王星に近い側からアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロンと命名された。
なお、パース天文台[Perth Observatory]もこの掩蔽を観測したが、掩蔽前後の減光は6回(6つのリング)であったと報告している。
余談ではあるが、タイタン(土星の衛星)の大気の特性も掩蔽によって観測されている。
(→タイタン上空のジェット気流)
これら、5つのリングは1986年に天王星に接近したボイジャー2号によって撮影された。
天王星のリング
出展:Solar System Exploration:Uranus
リングは非常に暗い。
そのため、この写真はボイジャー2号が92秒の露出で撮影したものだ。
背後の恒星が線状に伸びているが、これは露出時間が長いためである。
ボイジャー2号はこの他にもリングを6本発見したため、リングの総本数は11本になった。
リング名 | 距離(km) | 幅(km) |
1986U2R | 38000 | 2500 |
6 | 41837 | 1-3 |
5 | 42253 | 2-3 |
4 | 42572 | 2-3 |
Alpha | 44718 | 4-13 |
Beta | 45661 | 7-12 |
Eta | 47176 | 1-2 |
Gamma | 47627 | 1-4 |
Delta | 48300 | 3-7 |
Lambda | 50024 | 2-3 |
Epsilon | 51149 | 20-95 |
出展:Solar System Exploration:Uranus
その後、2005年にハッブル宇宙望遠鏡が2本をリングを発見した。
これらのリングは、1977年の掩蔽時に発見されたリングの二倍の距離にある。
ハッブル宇宙望遠鏡はこのリングのすぐ外側に、あらたな衛星マブ[Mab]を発見した。
このマブからダストが供給され、リングを形成しているダストが入れ替わっているらしい。
このリングは非常に暗いため、氷ではなく岩石質で構成されていると予想されている。
さらに、2006年には、ケック天文台によって2本の外側のリングが発見された。
それぞれ、青、赤の色味がついている。
土星の最外のリングにも色味がついている。
偶然なのか、惑星形成の必然なのか判然としていない。
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参考文献・サイト
Solar System Exploration:Uranus
NASA's Hubble Discovers New Rings and Moons Around Uranus
Blue ring discovered around Uranus
Wikipedia:Uranus
2010/05/03