アレスI/AresIを語る。
アレスIとは
アレスIは次世代宇宙船オリオンを打ち上げるための専用ロケットである。
アレスI
出展:Constellation Program
米国の新宇宙政策によって2010年のスペースシャトル退役が決まった。
シャトルの後継として国際宇宙ステーションとの往復に利用される宇宙船がオリオンだ。
アレスIは、このオリオンの打ち上げに使用される。
2009年8月、このアレスIの試験機アレスI-Xの打ち上げが計画されている。
アレスIは、スペースシャトルのシステムや技術を引き継いで開発される。
開発のためのコストが低減できるだけでなく、保守のための要員や設備もそのまま活用できるからだ。
オリオン、アレスIなど次世代の宇宙輸送システムの開発プロジェクトをコンステレーション計画という。
アレスIの構造
アレスIは、2段ロケットである。
そのスペースシャトルの固体燃料ロケットブースター[SRB]の改良品が、2段目にはJ-2Xエンジンが導入される。
オリオン宇宙船は、アレスI2段目の先端部にが搭載される。
アレスIの構造
NASAの画像を利用しています。
アレスIの1段目はATKランチ・システムズ社が、2段目はボーイング社が製造する。
アレスIの1段目
アレスI全体を上昇させることが1段目の役割である。
スペースシャトルの固体燃料ロケットブースター[SRB]と類似のシステムを使用している。
打ち上げ直後のアレスIが異常な飛行経路に向かったら、地上に落下する危険がある。
その場合、緊急脱出装置(LES)でクルーを安全に退避させた後、アレスIを空中で爆破する。
爆破は、一段目に装備された破壊装置で実施される。
固体燃料
スペースシャトルの場合、SRBは外部タンクの両側に装着された補助ロケットで4つのセグメントから構成される。
一つのセグメントには、推進剤としてポリブタジエンアクリロニトリル[PBAN]が使用されている。
アレスIの1段目は、このSRBを5セグメントにしたものだ。
これによって、シャトルのSRBよりも長時間の噴射が可能となる。
もちろんアレスIでは、外部タンクと接続用のアタッチメントも不要になる。
また、アレスIでは、シャトルのSRBよりも噴射口の径も7センチメートルほど広くなっている。
パラシュート
スペースシャトルはケネディ宇宙センターから打ち上げられた約2分後、高空でSRBを切り離す。
スペースシャトルは、そのまま宇宙へ出るが、SRBはパラシュートでインド洋に降下する。
その後は専門の艦船によって回収され、ユタ州の工場で整備を受け以後のシャトルの打つ上げに再利用されるのだ。
アレスIの1段目も、スペースシャトルのSRBと同じプロセスで再利用されることになる。
打ち上げ後約133秒後にアレスIの1段目が分離する。
分離後のアレスIの1段目は空中を落下するが、3段階のパラシュートで減速する。
分離直後、まず第1パラシュート(直径3.5メートル)が展開し、軽く減速させる。
続いて第2パラシュート(直径20メートル)が展開し、アレスIの1段目の姿勢が垂直になるように整える。
最後に3つのメインパラシュート(直径45メートル)が展開し、アレスIの1段目を効果的に減速させ、海面に着水させるのだ。
アレスIの2段目
アレスIの2段目は、酸化剤(液体酸素)のタンク、燃料(液体水素)のタンク、J-2Xエンジン、航行制御システムから構成される。
2つのタンクは、それぞれアリミニウム-リチウム合金製で摩擦攪拌溶接技術が使用されている。
アレスIは、打ち上げから約133秒後に1段目から分離され2段目のエンジンJ-2Xに点火される。
エンジンが465秒間噴射された後、アレスIの2段目からオリオン宇宙船が分離する。
分離後のアレスIの2段目は、大気圏に再突入しインド洋に落下するのだ。
2段目は使い捨てなので、回収されることはない。
J-2Xエンジン
アレスIの2段目に使用されているエンジンJ-2Xは、アポロ計画で使用されたサターンV、サターンIBロケットのJ-2エンジンをルーツとする、由緒正しいロケットエンジンである。
J-2Xは液体酸素と液体水素を推進剤とする。
アレスI-X
アレスI-Xとは
アレスIの打ち上げテストが2009年に計画されている。
このテストの使用される機体をアレスI-Xという。
本来アレスIの1段目は、SRBを5セグメントにしたものになる。
しかし、アレスI-Xに使用されるSRBは4段である。
2段目やオリオンが未完成であるため、これらに相当するダミーが装着される。
アレスI | アレスI-X | |
先端 | LAS | LASダミー |
ペイロード | オリオン | CMダミー |
2段目 | J-2Xエンジン | USS |
1段目 | SRBを5セグメント | SRBを4セグメント FSAM |
FSAM
アレスI-Xの1段目には、4セグメントのSRBを使用する。
本来、アレスIの1段目に使用されるSRBは、5セグメントだ。
セグメントを一つ外し、その代わりにFSAMが導入されている。
FSAMの役割は、打ち上げから海面への落下までの間のデータを記録することである。
1段目が2段目から分離される模様を、1段目から撮影するのも重要な役割になっている。
これらデータは、その後のアレスI開発の貴重な情報となる。
USS
アレスI-Xに2段目ロケットの開発は間に合わない。
そこで、代わりにダミーを使う。
ダミーをUSSという。
USSはアッパー・ステージ・シュミレーターの略である。
USSは実際のアレスIの2段目に、サイズ、質量、重心が似せて作っている。
温度、振動を測定するためのセンサーも装備されている。
アレスI-Y
アレスI-Yとは
アレスI-Yは、アレスI-Xの次に計画されているアレスIの打ち上げテスト用試験機である。
打ち上げは2013年夏に計画されている。
アレスI-Xに使用されるSRBは4段であったが、アレスI-Yは5段を使用する。
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参考文献・サイト
Ares Launch Vehicles
AresI
About the Ares I-X Rocket
SRB Overview
ATK Launch Systems
2008/09/14
2009/04/26