PETM / 始新世高温期を語る。
気候変動と温暖化
地球の環境は、寒冷化と温暖化を繰り返してきた。
特に顕著な温暖化が2回あった。
白亜紀と始新世である。
現代も温暖化が社会問題になっている。
しかし、現代の温暖化は人類の文明社会や生態系にとって深刻なのであって、地球の歴史全体から見みればスケールが小さい。
白亜紀、始新世の温暖化は南北両極から完全に氷が消滅していたのである。
ここでは、始新世の温暖化(始新世高温期)について解説する。
PETM / 始新世高温期とは
約6,500万年前に中生代が終わると、続いて新生代 古第三紀が始まった。
古第三紀の最初の1000万年を暁新世といい、それに続く1700万年間が始新世である。
始新世は約5,500万年前に始まり、約3,800万年前に終了した。
暁新世から始新世に変るタイミングで気候変動が起こり、地球全体が急激な温暖化に見舞われた。
温暖化の程度は研究者によって異なる。
控えめな値では20万年間に6度、シビアな値では10万年で7℃の上昇があったと考えられている。
この時期を始新世高温期という。
暁新世[Paleocene]と始新世[Eocene]にかけて、熱的[Thermal]に極大[Maximam]になったので、PETMと略す場合もある。
始新世境界温暖化極大イベントという名称もある。
PETM / 始新世高温期の原因
PETMは大気中の温室効果ガスの増加が原因らしい。
しかし、なぜ温室効果ガスが増加したのかは、分かっていない。
その一つとして火山活動の活発化が考えられている。
暁新世の末期、プレートテクトニクスによってインドがユーラシア大陸に衝突した。
この影響で、地殻が刺激され各地で火山活動が活発になり、二酸化炭素が大量に放出されたというのである。
大陸移動に伴う海流の変化も見逃せない。
海流は熱を運搬する役割を持つので、海流の経路が変化すれば、気候も変るからだ。
海底の火山活動により、海底のメタンハイドレートが一気にメタンを放出したという説もある。
その他に、彗星の衝突などの主張もある。
温度上昇の影響
温暖化によって極域の氷が溶け海水が増えた。
また海水が膨張し、海面が上昇した。
この影響によって、海流の経路が大きく変化し、全地球規模で気候が変動した。
海底では酸欠が起こり、生物が死滅した。
しかし、温暖化と酸欠との因果関係は解明されていない。
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参考文献・サイト
The Eocene
Paleocene-Eocene Thermal Maximum and the Opening of the Northeast Atlantic
PALEOCENE-EOCENE THERMAL MAXIMUM
2008/04/04