ホーキング織野の

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ダークマターを語る。

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ダークマターとは

宇宙に存在する物質を理論的に予測した量と、実際の観測から見積もられる物質の量には大きな違いがある。
このため、宇宙には光で観測できない物質が多く存在すると考えられている。



光で観測できない物質をダークマターという。
暗黒物質という場合もある。



「光で観測できない」とは「見ることができない」という意味である。
ダークマターは質量(重さ)はあるが、見えない物質なのだ。



目に見える物質は15%で、残りの85%がダークマターだ。
我々の目に見える通常の物質は宇宙では少数派なのだ。



さらに物質だけでなくエネルギーも含めると、74%がダークエネルギー、22%がダークマターである。
宇宙の96%は見えないのである。




見えないダークマターの発見

銀河団の運動

100個以上の銀河の集団を銀河団という。
銀河が集まっていながら、重力によって1つに固まらないのは、個々の銀河が好き勝手な方向に移動しているからだ。
一方、好き勝手な方向に移動しながら銀河団がバラバラにならないのは、お互いの重力が相互にブレーキをかけるからである。



つまり、銀河団は個々の銀河の「飛び出そうとする勢い」と「引き戻そうとする重力」がバランスしているので、銀河団としてのまとまりを保っているのである。



1930年代に個々の銀河の速度(飛び出そうとする勢い)を観測から求めた。
ところが、この値が予測以上に大きいことが判った。



銀河団全体の重力(引き戻そうとする重力)は、銀河団を構成する銀河の数を調べることによって計算される。
これによって求められた重力よりも、個々の銀河の速度が10倍も大きいのである。
10倍も大きければ、銀河団はとっくにバラバラになっているはずである。



今もなお銀河団が健在であるのは、見えている銀河の10倍の物質がなければおかしい。
ツウィッキーは、観測では検出できない物質が存在すると仮定し、ダークマターと呼んだ。




銀河団のガス

銀河団はガスに満ちている。
このガスは銀河団の中心ほど濃く、熱い。
その温度は1億度にも達し、強力なエックス線を放っている。



これほど熱いガスであれば、運動が活発なため散逸してしまっていいはずだ。



そのような熱いガスが、中心部に留まっていられるのは、より大きな質量が存在しなくてはならない。
より大きな質量がダークマターである。




銀河の回転問題

地球が太陽の周囲を公転するのは、太陽の重力と地球の遠心力がバランスを保っているからだ。
太陽の重力は、太陽から離れるに従って弱くなる。



そのため、外側の惑星ほど公転の遠心力が弱い。
つまり、公転のスピードが遅い。



銀河に含まれる恒星も同じだ。
銀河の重力と、個々の恒星の遠心力がバランスした状態で銀河が回転する。



実際に個々の恒星の公転スピードを測定すると、予測以上に大きい。
しかも、銀河の中心から離れても公転のスピードが遅くならない。



これは、銀河には光での観測で検出されない物質が多く含まれていて、銀河の端まで分布していることを示している。




ダークマター(暗黒物質)の候補

ダークマターの正体は不明のままだ。
しかし、ダークマターの候補となる物質はいくつか考えられている。



ダークマターの候補は、大きくMACHO(マッチョ)とWIMP(ウィンプ)に分かれている。

マッチョ:MACHO
Massive Compact Halo Object
暗すぎて現在の技術では観測できない物質
ウィンプ:WIMP
Weakly Interacting Massive Particles
電磁的な相互作用を起こさない素粒子



元々WIMP(ウィンプ)という用語が先に考案された。
英語のWimpは「弱虫」という意味があるので、微細な素粒子とイメージを合わせたのだろう。


その後、WIMP(ウィンプ)に対比してMACHO(マッチョ)が考え出された。
英語のMachoは「筋肉ムキムキの男性」を意味する言葉である。



様々な研究よりダークマターの正体はWIMP(ウィンプ)である可能性が高い。




MACHO

MACHO[マッチョ:Massive Compact Halo Object]は、通常の天体であるが暗すぎて見えないもの指している。
例えば、小型のブラックホール褐色矮星中性子星白色矮星太陽系外惑星がダークマターの候補として考えられている。
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WIMP

天体以外にもニュートリノ、ニュートラリーノ、アクシオン等の素粒子がダークマターの候補となっている。
ただし、ニュートリノ以外は理論的に存在が予測されているのみで未発見である。

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参考文献・サイト

福江純「そこが知りたい天文学」日本評論社,2008
佐藤勝彦「宇宙論入門」岩波新書,2008
池内了「宇宙論のすべて」新書館,2007
福江純「目からウロコの宇宙論入門」ミネルヴァ書房,2008
NASA:Dark Matter
NASA:It's Dark Out There....
Chandra:Dark Matter
WMAP's Universe
University of Minnesota:Cryogenic Dark Matter Search

2008/03/15
2009/02/07



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