太陽を語る。
太陽とは どんな星なのか?
太陽系の中心:太陽
太陽は最も身近な恒星である。
地球から太陽までは、わずか1億5000万キロメートルである。
次に近いプロキシマまでの距離が、4.3光年であることを考えると、太陽が格段に近いことが分かる。
太陽は、太陽系の中心をなす天体である。
太陽系の中で、太陽は圧倒的な存在を示している。
何しろ、太陽の質量は太陽系全体の質量の99.8%を占めるのだ。
恒星は表面の色や温度によって分類することができる。
これをスペクトル分類という。
スペクトルでは、太陽はG型に分類される主系列星である。
主系列星の中で8%の恒星がG型スペクトルである。
「太陽はごく平凡な、ありふれた恒星」という表現を見かける。
しかし、主系列星の中で8%という数字を見ると、太陽は必ずしも恒星の大多数を代表していないということが理解できる。
太陽は、燃えていない
「太陽が燃える」などと表現する。
確かに、太陽が燃えているように見えるが実際には燃えていない。
単に、燃えているように見えるだけなのだ。
物体が酸素と結合して、熱と光を放出することを燃焼という。
太陽は、熱と光を放出しているが、燃焼によって放出しているのではない。
太陽のエネルギー源は、「酸素による燃焼」ではなく核融合反応なのである。
太陽の主成分は70%の水素、28%のヘリウムである。
その中心部では核融合反応によって4つの水素原子核から1つのヘリウム原子核が生成されている。
この核融合反応に伴って解放されるエネルギーが、太陽の熱や光の根源なのだ。
太陽の質量は極めて重い。
そのため太陽には、自重によって収縮しようとする力が作用する。
この作用によって、太陽の中心部の水素原子核がヘリウム原子核へと変換されている。
これが、核融合反応だ。
このときに放出されるエネルギーが、熱や光になって太陽が燃えているように見えるのである。
太陽の寿命
太陽の中心部では、毎秒7億トンの水素原子核がヘリウム原子核へと変換されている。
これだけのペースで水素を消費しても、太陽の寿命は長い。
太陽はおよそ46億年前に誕生し、さらに後50億年近く輝き続けるだろう。
自重によって収縮しようとする力が中心部の圧力を高めて、核融合反応が促進される。
核融合反応は莫大な熱を生じるため、太陽を膨張させようとする。
自重によって収縮と核融合反応による膨張がバランスして、太陽は安定したサイズを維持しているのだ。
このような安定した状態にある恒星を主系列星という。
核融合反応も永久には続かない。
水素を使い果たすと、太陽は赤色巨星を経て白色矮星へと変貌する。
太陽の構造
太陽は層になっている
太陽は燃焼ではなく、核融合反応によってエネルギー(熱と光、その他の電磁波)を放っている。
太陽はギラギラと輝いているので、太陽全体で核融合反応が起こっているように思えるがそうではない。
核融合反応が起きるためには、極度の高圧が必要である。
このため核融合反応は、太陽の全質量が集中して高圧となっている中心核でしか起こらない。
太陽は、核融合反応を起こす中心核を中心にして、性質の異なる層が積み上がってできている。(下表参照)
太陽内部 | 中心核 | 核融合反応によってエネルギーが解放される |
放射層 | 熱が放射に表面へ向かう。 | |
対流層 | 熱が対流によって表面へ運ばれる。 | |
太陽表面 | 光球 | 眼に見える太陽の表面 |
太陽大気圏 | 低温層 | 光球よりも温度が低い |
彩層 | プロミネンスが発生する | |
遷移層 | 急激に温度が上昇する。 | |
コロナ | 高温のプラズマの層 | |
太陽圏 | 太陽系全体に行き渡っている |
中心核
核融合により、水素からヘリウムの原子核が生成される。
このときに余剰のエネルギーが解放される。
放射層
中心核で開放されたエネルギーが放射によって、外側へ向かう。
対流層
放射によって運ばれたエネルギーによって、物質が加熱され、その物質が対流し、光球面に熱を運ぶ。
このときに余剰のエネルギーが解放される。
光球
太陽の表面を光球という。
光球には黒点が散在する。
太陽の表面は5800度程度の温度であるが、所々に温度の低い(3800度程度)領域が散在する。
この温度の低い領域が黒点だ。
太陽黒点
出展:NASA:Solar Physics
黒点はゆっくりと太陽表面を同一方向に移動していく。
このことから、太陽が自転していることが分かる。
自転周期は赤道付近でおよそ25日、極付近で36日である。
緯度によって自転周期が異なるのは、太陽がガス体であるからだ。
低温層
光球は6000度であるが、その上の低温層は4,000度程度しかない。
この層から、水分子の存在が確認されている。
低温層の厚みは約500キロメートルである。
彩層
光球の外側を囲むのが彩層である。
皆既日食の際、月のシルエットを囲むように炎のような光がチラチラと見える。
これが彩層だ。
遷移層
急激に温度が上昇する。
コロナ
彩層の外側に広がるのがコロナだ。
コロナは高温(100万度)のプラズマである。
やはり、皆既日食のときにしか肉眼では見えない。
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太陽圏
コロナの上層部は太陽からの引力の束縛が弱いため、コロナを構成している荷電粒子は少しずつ惑星間空間へと広がっていく。
これを太陽風という。
太陽風が影響する範囲を太陽圏という。
太陽圏は、太陽から100天文単位程度の位置にある。
太陽圏も太陽大気圏の一種なので、地球はおろか、冥王星も含めて太陽の大気圏内にいることになる。
太陽の現象
プロミネンス
光球から火柱のような光が噴出することがある。
これがプロミネンスだ。別名「紅炎」とも言う。
彩層のガスが太陽の磁力線にそって、コロナ中に突出したものがプロミネンスの正体である。
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右上にプロミネンスが突出している。
出展:NASA:NIX
フレア
太陽の表面では、ときとしてフレアと呼ばれる爆発現象が発生する。
フレアが発生すると、太陽からの放射線が増加する。
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コロナ質量放出
フレアにともなってコロナから大量の物質が惑星間空間に放出される場合も多い。
この現象をコロナ質量放出[Coronal Mass Ejection:CME]という。
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コロナホール
コロナは太陽は周囲に均等に広がっているとは限らない。
コロナの非常に薄い領域もある。
このような領域をコロナホールという。
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太陽風
太陽が常に放出している荷電粒子の流れを太陽風と呼ぶ。
水素イオン、ヘリウムイオンが太陽風の質量の98%を占めている。
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太陽活動周期
太陽はおよそ11年周期で活動する。
これを太陽活動周期といい、活発な時期と停滞期を交互に繰り返す。
太陽活動が活発な時期には、黒点の数が増え、フレアが多くなる。
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太陽の諸問題
太陽は身近な天体であるが、まだまだ謎が多い。
ここでは太陽に関わる3つの謎を紹介する。
太陽ニュートリノ問題
太陽は核融合反応に伴ってニュートリノを放出している。
実際に観測されるニュートリノの量は、理論的な予測値よりも、なぜか少ない。
この謎を太陽ニュートリノ問題という。
コロナ加熱問題
光球は6000度であるが、その外側のコロナは100万度もある。
コロナがなぜ、高温なのかは分かっていない。
磁気による影響と予測されている。
暗い太陽のパラドックス
地球誕生初期の太陽は、現在よりも25%暗かったことが恒星進化の研究から分かっている。
これだけ暗いと、地球が受け取るエネルギーが少ないので、地球全体が凍結するはずである。
この矛盾を暗い太陽のパラドックスという。
しかし、この時代、完全に凍結したという証拠は得られていない。
地球誕生初期の大気は二酸化炭素が高濃度であったため、温室効果により凍結を免れたと考えられている。
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天文単位
太陽は、地球に最も近い恒星でもある。
太陽までの距離は1億5千万kmである。
この距離を1AU[Astronomical Unit:天文単位]と呼び、太陽系内の距離を測る尺度になっている。
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参考文献・サイト
NASA:Solar Physics
NASA:Solar System Exploration
The Sun
From the Sun to the Earth:Polar, Wind and Geotail
NASA Calls on APL to Send a Probe to the Sun
2008/11/16