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スペクトル型を語る。

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スペクトル型とは

星の色は様々だ。
ここから、恒星の性質を色で表そうという発想が生まれた。

恒星を色で分類したとき、G型星、M型星などと表現する。
このような表現方法がスペクトル型分類だ。
ここでは、スペクトル型分類の意味について基本から解説しよう。




ウィーンの変位則

ニクロムはニッケルとクロムから構成される合金で、線状にしたものをニクロム線という。
ニクロムは適度な抵抗値と高い融点を持つので、電流を流すことによってヒーターとして使用される。



例えば、ヘアドライヤーの内部にはニクロム線をコイル状に巻いたヒーターが内蔵されている。
スイッチを入れるとニクロム線に電流が流れて発熱するので、同時にファンを回転させると、空気が加熱され先端から温風が吹き出すのだ。



ニクロム線に電流を流す理科の実験がある。
電流量が増加するにつれ、ニクロム線の温度が高くなる。
温度が上昇するとニクロム線が赤黒い光を放つようになる。



これは日常でも体験することがある。
焼肉用の電熱プレートをスイッチを入れた状態で横から見ると、ヒーターが赤黒く発光しているのが確認できる。



さらに実験を続けて電流量が増加させると、ニクロム線の発光色は赤色からオレンジ、黄色、青白、青と変化する。
つまり、温度が上昇するにつれ、放たれる光の色が変化するのだ。
この実験は暗室内で行うと非常に理解しやすい。



この実験から
物体は温度に応じた色を放つ
ということが分かる。

しかし、それだけではない。
物体の温度が高いほど、放射される光の波長が短くなる
がこの現象の結論なのだ。


これを「ウィーンの変位則」と呼ぶ。
ウィーンの変位則の知っていれば、発光色を見て、その物体の温度が分かるのである。




スペクトルと恒星の色

光は電磁波という波である。
波の頂上から次の頂上までの距離を波長と呼ぶ。


電磁波の波長


人間は「波長の違い」を「色の違い」として視神経が感じ取るのだ。
目に赤色が映ったときは、波長の長い電磁波が知覚されたときである。



恒星の光もウィーンの変位則に従う。
恒星には様々な色があるが、それぞれ表面の温度が異なるからなのだ。
赤い恒星は温度が低く、青い星は非常に高温である。



太陽光がプリズムを通過すると、光が波長ごとに分解され虹のパターンが出現する。
これがスペクトルだ。
太陽以外の恒星の光もプリズム(正確には分光器)によってスペクトルを得ることができる。



恒星表面の温度が違えば、発光色も異なる。
発光色が違えば、スペクトルも変化する。
温度、色、スペクトルは相互に関連しているのだ。




スペクトル型分類

ハーバード分類法

温度、色、スペクトルの関係が理解されると、恒星のスペクトルの研究が始まった。
ここで、スペクトルによって恒星を分類しようという発想が生まれる。
これをスペクトル型分類という。



スペクトル型の基本はO,B,A,F,G,K,Mの7タイプである。
これら分類は恒星を温度ごと、色ごとに仲間分けしていることになる。
ハーバード分類法とも呼ばれている。


表面温度発光色
O型30,000-60,000K
B型10,000-30,000K青白
A型7,500-10,000K
F型6,000-7,500K薄黄色
G型5,000-6,000K黄色
K型3,500-5,000Kオレンジ
M型2,000-3,500K


なお、温度の単位が「℃」ではなく「K」となっているが、これは文字化けではない。
絶対温度で表記する場合の単位は「K(大文字のケイ)」なのだ。
「ケルビン」と読む。



このハーバード分類法では、太陽はG型に相当する。
ハーバード分類法はHR図の横軸としても用いられる。




ハーバード分類法の細区分

それぞれのスペクトル型は、さらに10段階に細区分される。
アルファベットの直後に0〜9の数字を付け加えるのだ。
太陽の場合はG2型になる。



数字を小数にすれば、さらに細かい分類になる。
たとえば、バーナード星のスペクトル型はM3.8と表現される。




ハーバード分類法の拡張

天文学の進展によって、新たな天体が発見されるようになると、従来のスペクトル型分類では対応しきれなくなった。
そこで、次のようなスペクトル型が設定された。
ウォルフ・ライエ星:W型
褐色矮星:L型、T型、Y型
白色矮星:D型
炭素星:C型




ヤーキース式スペクトル型分類

恒星のスペクトル型は、恒星の表面温度を反映しているものだ。
ところが、よくよく調べてみると「スペクトルは温度だけで決まるのではない」ことが分かってきた。
このため、星の性質が異なるのに、同一のスペクトル型に分類されてしまうという問題が持ちあがった。



そこでヤーキース天文台では、絶対等級を参考にして恒星をI、II、III、IV、V、VI、VIIの7段階に区分することにした。
おおよそIは超巨星、IIIは巨星、Vは主系列星、VIIは白色矮星に対応する。
さらに各段階をIa、Iab、Ibのように三段階に細分類する。



この方式をヤーキース式スペクトル型分類という。
研究者のイニシャルからMK型分類と呼ぶ場合もある。



ヤーキース式スペクトル型分類をハーバード式に合わせて、M1Iaなどと表現する。
この場合は、M1型の超巨星だ。
太陽はG2Vなので、G2型の主系列星であることが分かる。





スペクトル型分類と恒星

O型星

アルニタク(オリオン座ζ星)



B型星

リゲルスピカ



A型星

シリウスベガ



F型星

カノープスプロキオン



G型星

太陽



K型星

アークトゥルスアルデバラン



M型星

アンタレスベテルギウス



W型星

ウォルフ・ライエ星に適用される。



L型星

褐色矮星に適用される。



T型星

褐色矮星に適用される。



Y型星

褐色矮星に適用される。



D型星

白色矮星に適用される。




スペクトル型の関連ネタ

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参考文献・サイト

国立天文台「理科年表」丸善,2007
The Spectroscopy Net
Spectral Analysis

2007/05/09
2008/10/06



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