ホーキング織野の

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褐色矮星を語る。

トップページ銀河系の目次恒星の進化褐色矮星

褐色矮星とは

主系列星と褐色矮星

安定して光り輝く恒星主系列星という。
主系列星のエネルギー源は核融合反応だ。
核融合反応が安定的に継続しているから主系列星でいられるのだ。



恒星暗黒星雲から誕生する。
ガスが重力で集まり、中心部の圧力と温度が高まると、核融合反応が起きる。
こうして熱が発生し恒星が誕生する。



ところが、集まったガスが少ないと中心部の圧力と温度が高くならない。
この場合、この星は核融合反応が起こらず、主系列星にはなれないのだ。
これが褐色矮星である。
褐色矮星は、ガスが必要量に達しなかったために光ることができなかったのだ。



褐色矮星は、主系列星になりそこなった天体なのである。
核融合を起こさないでの自ら輝くことができない星だ。
褐色矮星は、輝くことのできない、単なるガスの塊の星なのだ。





褐色矮星の性質

褐色矮星は可視光(目に見える光)を出してはいないが、赤外線は放射している。



最初にガスが集まるときに熱が発生する。
この熱は褐色矮星の内部に蓄積されている。



内部に蓄積された熱のため、褐色矮星の表面は1000度〜2000度の温度になる。
褐色矮星は、この温度に応じた赤外線を出しているのである。



褐色矮星の表面温度は、単なる余熱である。
自分で熱を生成しているのではない。
このため、褐色矮星は早々と冷却していく運命にある。



巨大な星よりも、小型の星の方が、多く誕生する。
褐色矮星は低質量なため、宇宙では大量に誕生していると考えられている。
ただし、たくさん存在していたとしても、可視光を放たないので発見しにくいのだ。



褐色矮星は自前でエネルギーを生成しない。
しかし、誕生まもないころの褐色矮星は、ごく短い期間、重水素で核融合反応を起こす。



普通の水素よりも、中性子が多い水素を重水素という。
重水素は、水素にくらべ、低い圧力でも核融合反応を起こすことができる。
このため、質量の小さい褐色矮星の内部でも、重水素による核融合反応は起こるのだ。



ところが、普通の水素よりも重水素の量は少ない。
褐色矮星の内部で、せかっく重水素による核融合反応が起こっても、すぐに重水素を使い果たし、反応が停止してしまうのだ。
当然、普通の水素で核融合反応を起こすほどの質量はないので、そのまま赤外線を放って冷却していくのである。



褐色矮星にもフレアや磁気があることが確認されている。
ろ座の褐色矮星LP 944-20が放つフレアをチャンドラX線観測衛星が捉えたのだ。





褐色矮星のサイズ

褐色矮星の質量は、木星の13倍から80倍程度である。
このうち、50-80倍の範囲にある褐色矮星をL型褐色矮星、50倍未満をT型褐色矮星という。

褐色矮星と赤色矮星の区別

大きめの褐色矮星と小さめの赤色矮星を区別する方法として、リチウムの検出がある。
リチウムは核融合によってヘリウムへと変換される。
赤色矮星は核融合を起こすのでリチウムが検出されれば、褐色矮星である。



褐色矮星と巨大惑星の区別

近年では、褐色矮星と巨大惑星に本質的な違いはなく、境界はないという説が出てきている。





褐色矮星の例

インディアン座ε[ε Ind]

インディアン座εは、主系列星である。
この星から、1500天文単位の距離を二つの褐色矮星BaとBbが公転している。
褐色矮星BaとBbは、互いに共通重心の周りを回転しながら、インディアン座εの周囲を公転しているのだ。




DEN 0255-477

太陽系から16.2光年の距離にある褐色矮星である。

明るさは太陽の6600万分の1しかない。
非常に暗い星で、絶対等級は24.4等である。




GD 165B

最初に発見された褐色矮星である。
L型褐色矮星に分類される。




SCR 1845-6357B

くじゃく座にある褐色矮星である。
赤色矮星と連星をなしている。
木星質量の50倍と見積もられている。





ダークマターと褐色矮星

銀河の回転や、銀河団の運動を調査すると、理論的に予測した以上に銀河が重いことが分かる。
まるで、目に見えない錘(おもり)を付けて運動しているようなのだ。



実際に観測できる物質と、理論的に見積もられる物質の量には大きな違いがある。
この違いが、見えない錘として振舞っているのである。
宇宙には光で観測できない物質が多く存在すると考えられている。



このような見えない質量をダークマター、または暗黒物質という。
ダークマターの正体は分かっていない。



ダークマターは重さ(質量)はあるが、光で見えない物質と考えられている。
このため、冷却後の褐色矮星が、ダークマターの正体ではないかという説もある。





赤外線宇宙望遠鏡による褐色矮星の探査

褐色矮星は、太陽系の近くにも大量に存在すると予測されている。
しかし、低温なため、電波や可視光を放たず発見が難しい。
そこで期待されているのが、高感度の赤外線宇宙望遠鏡である。



NASAが、2009年11月に打ち上げを計画しているWISEは、かつてない感度を持つ赤外線宇宙望遠鏡である。
WISEは、全天をスキャンして赤外線源をマッピングする。
多くの褐色矮星が発見されると期待されている。





その他の矮星

矮星には次のような種類がある。

褐色矮星小さすぎて核融合を起こせなかった星
赤色矮星非常に小さく、低質量な主系列星
青色矮星末期の赤色矮星
白色矮星太陽クラスの主系列星の末路の星
黒色矮星時間が経過し、冷え切った白色矮星





褐色矮星の関連ネタ

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参考文献・サイト

HARVARD-SMITHSONIAN CENTER FOR ASTROPHYSICS
Encyclopedia of Science:Brown dwarf
The National Optical Astronomy Observatory
L and T Dwarf Models and the L to T Transition
The Two Micron All Sky Survey at IPAC

2008/02/02



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