銀河系を語る。
銀河系とは
銀河系とは、太陽系を含む2000億個の恒星の集団のことである。
太陽は2000億のメンバーとともに、星の大集団を作っているのだ。
夜空を見上げるとき、我々は銀河系を内側から見ていることになる。
天の川が見えるのは、地球が銀河系の内部にいる証拠でもある。
まず、天の川と銀河系の関係から、解説をはじめよう。
天の川の正体
天の川とは、天球を一周する淡い光のスジである。
空気の澄んだ地域では、月のない夜に天の川を肉眼で見ることができる。
天を流れる川のように見えることから、天の川という名がついた。
中国では銀河と呼ぶ。
西洋では、生まれたばかりのヘラクレスがヘラの母乳を吸うときに、飛び散った乳が天にかかったとする神話に由来して、天の川をMilky Way(乳の道)と呼ぶ。
天の川の正体は星である。
無数の微光星が密集しているのだ。
微光星の集合が淡い光のスジに見えるのである。
天の川が微光星の集まりであることを発見したのはガリレオであった。
オランダで望遠鏡は発明されたと聞くと、ガリレオは早速独力で自作しこれを天体観測に応用したのだ。
ガリレオはこの他にも、木星の4大衛星や月面のクレーター、太陽黒点を望遠鏡を使って発見している。
銀河系の発見
ハーシェルは、全天を細かな区画に分割して、各区画に見られる星の数を丹念に数えていった。
その結果、ハーシェルは、天の川を中心に星が密集し、天の川から離れるに従って星の数が減っていくことを突き止めた。
この観測結果から、星は宇宙全体に均一に分布しているのではなく、フリスビーのような円盤の形状に集まっていることが判明した。
我々はこの円盤を内部から眺めているため、天の川がリング状に天球を取り巻いているように見えるのだ。
この円盤状の星の集合を銀河系という。
我々は漠然と宇宙にいるのではなく、銀河系の内部にいるのである。
宇宙は広いが、星がある所は銀河系の一か所のみで、その他は何もない空間と考えられた。
「銀河系が宇宙のすべて」とみなされていたのである。
銀河系の構造
出展:University of California, San Diego
銀河系以外の銀河
銀河系が発見されると、恒星は宇宙全体に散らばっているのではなく、一か所に集まって銀河系を形作っていると考えられた。
このような考えから、銀河系を小宇宙、または島宇宙と呼ぶ場合もある。
広い宇宙の中で、銀河系だけがポツンと存在し、その中にすべての恒星、星雲、星団等の天体が含まれているイメージである。
その後、アンドロメ座の大星雲(M31;NGC 224)までの距離が約300万光年ほどであることが、観測結果から確認された。
この距離が、銀河系の直径のほぼ30倍であることから、アンドロメダ座大星雲は銀河系の外側にあることが明白である。
銀河系の外側には何もないと思われていたが、実は銀河系以外にも天体があったのである。
その後、さらにアンドロメダ座大星雲が銀河系と同様なサイズであることが判明した。
このため、銀河系は宇宙で唯一、星が集合している場所との認識は崩れた。
「銀河系が宇宙のすべて」と思われていた当時としては、コペルニクスの地動説以来の大きな衝撃だったに違いない。
当時の新聞は「我々の住む宇宙とは別の宇宙が発見された」と報じたという。
アンドロメダ座大星雲以外にも、当初、銀河系内にしか存在しないと考えられていた星雲のいくつかは、銀河系から離れた遥か遠方にあることが確認された。
銀河系に類似した島宇宙が宇宙中に散らばっていることが認識された。
このような銀河系の外側にある島宇宙を、銀河系内の星雲(散光星雲や惑星状星雲)と区別するために銀河系外星雲という。
本来、「銀河」は太陽系の所属する銀河系を意味する言葉であったが、銀河系外星雲も含めて指すようになった。
一方で我々の住む銀河であることを強調する場合には天の川銀河と呼ぶ場合もある。
銀河系の構造
銀河系のサイズと形
銀河系は2000億個の恒星が集合して作られている。
今日の観測では、銀河系は直径10万光年の巨大な渦巻きであり、特に中心部が膨らんでいることが確認されている。
膨らんでいる中心部をバルジ、周囲の渦巻きをディスク(または円盤)という。
ディスクの直径は10万光年もある。
さらに希薄な星間物質が銀河全体を丸ごと包みこむように取り囲んでいる。
これをハローという。
球状星団が分布するのは、このハローの中だ。
我々は銀河系の内部にいる。
このため銀河系の全体像を直接見ることはできない。
しかし、さまざまな観測データから銀河系は棒渦巻銀河と考えられている。
ディスク
銀河の特色は、その渦巻きにある。
銀河系外星雲の形は見れば分かるが、銀河系の形をつかむのは難しい。
何しろ、銀河系の中にいるので、銀河の全体像がよく見えないのである。
さらに、銀河のディスクには光を吸収する星間塵がある。
このため、丹念に観測しようとしても銀河の遠方が見えない。
星間ガスに含まれる水素は波長21cmのマイクロ波を放射する。
このマイクロ波は星間塵に妨害されない。
これを観測することによって、銀河の渦の構造や銀河の回転が明らかになったのだ。
太陽系は銀河系の中心ではなく、辺縁部に近いディスクの中にいる。
さそり座、いて座の方向の天の川は太く明るく見える。
これは、銀河系の中心方向を見ているからなのである。
ハロー
銀河系に限らず、他の銀河も、球状星団がディスクを取り囲こむようにハローに分布している。
現在までのところ、銀河系の周囲には約150個の球状星団が確認されている。
恐らく、あと20個程度の未発見の球状星団があることだろう。
シャプレーは球状星団の分布の様子から、太陽系が銀河系の中心から離れていることを推察した。
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バルジ
ディスクに若い星が多いのに対し、バルジには古い星が多い。
銀河系の中心部には、超巨大ブラックホールが存在すると予測されている。
銀河系の特色
銀河系とダークマター
銀河の運動から理論的に予測される物質量と、実際の観測から見積もられる物質量には大きな違いがある。
このことから、銀河は可視光で観測できない物質を多く含んでいると考えられている。
このような物質をダークマターという。
暗黒物質という場合もある。
小型のブラックホール、褐色矮星、中性子星、白色矮星、太陽系外惑星がダークマターの候補である。
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銀河面吸収帯
天の川の中央方向を銀河面という。
銀河面には星間物質が多いため、遠方の天体がよく見えない。
何しろ、銀河面の星間物質は可視光の約20%をカットしてしまうからである。
このようなエリアを銀河面吸収帯と呼ぶ。
ZOA[Zone of Avoidance]と略す場合もある。
50億年後の銀河系
銀河系とアンドロメダ銀河は、50億年後に衝突すると予測されている。
これは、個々の恒星が互いに衝突することを意味しているのではない。
銀河系とアンドロメダ銀河の衝突によって、双方に属する恒星が入り乱れ、やがて、楕円銀河が形成されると考えられている。
衝突する銀河NGC 2207。銀河系とアンドロメダ星雲もこのように衝突する。
出典:APOD
局部銀河群
銀河は、数億〜数千億個の恒星の集合体である。
大量の恒星の引力のため、銀河は互いに引き合い群を作る。
この群を銀河群という。
銀河系はアンドロメダ大星雲(M31)、さんかく座大星雲(M33)と供に銀河群を作っている。
この銀河群を局部銀河群という。
局部銀河群には、矮小銀河も含めて30個程度の銀河が所属する。
その中で、銀河系はアンドロメダ銀河に次いで2番目に大きい。
しかし、アンドロメダ大星雲の質量は少ないため、銀河系が局部銀河群で最も重い銀河である。
大型の銀河は引力によって、小型の銀河を拘束する。
これが伴銀河だ。
大マゼラン雲、小マゼラン雲、いて座矮小銀河は、銀河系の伴銀河である。
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銀河系の関連ネタ
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- 銀河系の本
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参考文献・サイト
The Milky Way Galaxy
Possible New Milky Way Spiral Arm
Astronomy Picture of the Day
Two of the Milky Way's Spiral Arms Go Missing
2009/03/14
2009/07/04
2009/11/23
2014/11/09