フラウンホーファー線を語る。
[2]フラウンホーファー線は、なぜ現れるのか?
ガス体はある特定の波長の光を吸収する。
どの波長の光を吸収するかは、そのガス体を構成する元素で決まる。
連続スペクトルを持った光がガス体を通過すれば、そのガス体を構成する元素に応じた波長が吸収されるので、連続スペクトルにフラウンホーファー線が現れる。
太陽の中心部では核融合反応が起こり、熱と光が放出される。
放出された光は連続スペクトルであるが、太陽の外層のガス体を通過するときに、特定の光が吸収されてフラウンホーファー線が生じるのだ。
元素とフラウンホーファー線
吸収される光は元素に固有である。
つまり、フラウンホーファー線を観察すれば、太陽を構成している元素が分かるのだ。(下表参照)
話は太陽だけにとどまらない。
遠方の恒星であっても、フラウンホーファー線を観察することにより、その恒星の構成元素が分かるのである。
フラウンホーファー線 | 元素 | 波長(nm) |
A線 | O2 | 759.370 |
B線 | O2 | 686.719 |
C線 | Hα | 656.281 |
D1線 | Na | 589.594 |
D2線 | Na | 588.997 |
D3線 | He | 587.565 |
E2線 | Fe | 527.039 |
F線 | Hβ | 486.134 |
G線 | Fe | 430.790 |
H線 | Ca+ | 396.847 |
K線 | Ca+ | 393.368 |
フラウンホーファー線の注意事項
ここで、注意が必要だ。
A線、B線は酸素による吸収線であるが、これは太陽ではなく地球大気で生じた暗線なのだ。
太陽を発した光線は、宇宙空間を通り地球へと到達する。
このとき地球大気中の酸素が暗線を作ってしまうのである。
フラウンホーファーが暗線を研究した時点では、元素による吸収まで理解されていなかったのである。
もう一つ注意事項がある。
フラウンホーファー線のA線、B線・・・K線は、フラウンホーファーが波長の順にアルファベットを割り当てただけで、元素記号とは関係ない。
例えば、水素の原子記号はH、カリウムならばKである。
これと混乱し「H線は水素、K線はカリウムによる吸収」と誤認識してはならない。
フラウンホーファー線のH線もK線もカルシウムイオンによる吸収線である。
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参考文献・サイト
平山淳「現代天文学講座5 太陽」恒星社,1981
The Spectroscopy Net
With the right tools, astronomers decode the Nature’s cosmic messages in a beam of light.
太陽のフラウンホーファー線
2008/11/10
2009/12/26
2016/03/27