恒星の種族を語る。
恒星の種族とは
恒星は大きく二つに分類することができる。
第Ⅰ種族と第Ⅱ種族だ。
(最近、第Ⅲ種族も提案されているが、これは後述)
宇宙は150億年前に誕生した。
宇宙誕生の直後に生まれた恒星を第Ⅱ種族と呼ぶ。
この宇宙では古株で、大先輩にあたる星である。
これに対し第Ⅰ種族は、もっと後になって誕生した恒星だ。
寿命がつき、爆発した恒星の残骸のガスから、新たに生まれてきた新参の星なのだ。
この宇宙では二世代目、三世代目の恒星である。
ここはややこしい。
最初に生まれた星が種族IIで、その後が種族Iだ。
世代と種族の番号が逆なのだ。
今残っている第Ⅱ種族は当然、老齢である。
組成も水素とヘリウムだ。
宇宙創成時は水素とヘリウムしかなかったからだ。
第Ⅰ種族は、若いうえに様々な元素で構成される。
先代の恒星が爆発したときに撒き散らした元素を材料にしているからだ。
第Ⅰ種族は天の川に添って存在し、第Ⅱ種族は天の川から離れた領域に分布している。
恒星の種族の研究史
星の種族という考えを最初に導入したのはバーデである。
バーデはアンドロメダ星雲(M31)を観測して中心部には赤色巨星が、渦巻きの腕には青い星が多いことに気が付いた。
この発見を銀河系内の天体の分布に適用して、恒星を種族で分類する概念が生まれたのだ。
この研究の延長として、従来は一種類と考えられていたセファイド変光星は、第Ⅰ種族と第Ⅱ種族とでは絶対等級に違いがあることが確認された。
セファイド変光星は銀河系外星雲の距離を測定する指標となる星(標準光源)である。
絶対等級が違えば、距離の見積もりも違ってくる。
今日、第Ⅰ種族のセファイド変光星をケフェウスδ型、第Ⅱ種族のセファイド変光星をおとめ座W型と呼ぶ。
これに加え、宇宙の最初期には種族IIIが存在したとする仮説もある。
恒星の各種族
種族I
種族Iの恒星はリチウム以上の元素を持っており、メタルリッチと表現される。
種族IIと違って、種族Iの多くは惑星系を持つと考えられている。
種族II
宇宙が誕生してから38万年後に宇宙の晴れ上がりが起こり元素が誕生した。
この時点で元素は水素とヘリウムばかりで、その他の元素は極めて少なかった。
最初の恒星は、これら元素から生まれた。
したがって種族IIの恒星は、ほとんど水素とヘリウムでできている。
球状星団は古い星の集まりである。
すべて第Ⅱ種族で構成されている。
種族III
種族IIよりも、早く宇宙に誕生したと推測されているのが種族IIIだ。
太陽質量の100倍程度のサイズだったと考えられている。
このような巨大な星は中心部での核反応が高速で進むため寿命が短い。
種族IIIの恒星は残っていない。
種族I、種族IIが観測から発見されたのに対し、種族IIIは観測で直接発見することができないのだ。
(非常に遠方を観測すれば発見できるかもしれないが)
種族IIIが超新星爆発したときに放出したガンマ線が、ガンマ線バーストの正体ではないかという仮説もある。
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参考文献・サイト
福江純「目からウロコの宇宙論入門」ミネルヴァ書房,2008
国立天文台:天文ニュース (514)
2009/01/31
2009/11/23