火星探査機フェニックスを語る。
フェニックス
出展:Phoenix Mars Mission
低コストでコンパクトな火星探査機を開発するNASAの計画を、スカウト・プログラム[Scout program]という。
スカウト[Scout]は偵察という意味を持つ。
このスカウト・プログラムの第一弾がフェニックスだ。
フェニックス・マーズ・ランダーとも呼ばれている。
コスト削減の基本は、モジュールやパーツを以前の探査機と共通化することである。
フェニックスの機体は、ミッション中止により一度はお蔵入りしたマーズサーベイヤー2001ランダーの機体を改造し、装備の一部(SSI、TEGA)はマーズ・ポーラー・ランダーと共通設計である。
フェニックスは、アリゾナ大学の月惑星研究所[Lunar and Planetary Laboratory:LPL]が中心となって開発・運営される。
低予算とは言いながらも、フェニックスは将来の生命探査に繋がる重要な役割を担っている。
土壌をサンプリングしての探査はバイキング計画以来だ。
フェニックスの任務は重いのである。
NASAの火星探査の長期プランは、最終的に火星での生命発見を目指しているものの、現時点では直接の生命検出は計画していない。
まず、火星における水の存在形態を解明することが優先なのだ
これは、ピンポイントで生命を探すことよりも、水を中心とした火星環境の全貌を把握した上で、生命を探査する地点を絞り込もうという発想だ。
当然、フェニックスもこの路線の中で運用されるミッションなので、水に関する探査が中心になっている。
フェニックスの主要な探査目的は以下の2項目である。
- 極地方での水に関する地質学的な歴史を解明する
- 氷を含んだ土壌での生命存在の可能性を解明する
火星は乾燥した砂漠の惑星である。
その表面には、液体の水は存在しないと考えられている。
2001マーズ・オデッセイの観測データ
紫、青の領域に氷が多い。
出展:Phoenix Mars Mission
しかし、2002年、火星を周回する2001マーズ・オデッセイの観測データから北極付近に大量の水素が分布していることが判明した。(左図)
水素は、氷が存在する可能性を示唆するものだ。
場所によっては、地下の約80%が水の氷で占められているようだ。
今回のフェニックス計画は、実際に北極付近に探査機を着陸させ、凍土をサンプリングし科学的な分析を加えようというものだ。
具体的な着陸ポイントは、火星を周回するマーズ・リコナイサンス・オービタ[Mars Reconnaissance]の観測データを検討して決定される。
フェニックスは火星の北極に着陸し、ロボットアーム[Robotic Arm:RA]で土を掘り返してサンプルを機内へ格納する。
機内で分析し、水の化学的分析や生命存在の可能性を探るのだ。
(参照→フェニックスの観測機器を語る。)
フェニックスは、(マーズポーラーランダーが失敗したために)極地方のデータを採取する最初のミッションになる。
なお、フェニックス以後の着陸ミッションとしては、マーズ・サイエンス・ラボラトリの打ち上げが2011年に計画されている。
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参考文献・サイト
Phoenix Mars Mission(アリゾナ大学)
JPL:NASA's Mars Exploration Program
NASA:Phoenix Mission
2010/04/24