フォボスを語る。
フォボスとは
火星は二つの衛星を持つ。
このうち、内側を公転する衛星がフォボスである。
外側はダイモスだ。
フォボスは、火星の自転速度よりも速く公転する。
このため、火星表面から見るとフォボスは西から昇り東へ沈むのだ。
その間およそ4時間15分程度である。
フォボスの特徴
フォボスは、アメリカ海軍天文台のホール[Asaph Hall]によって1877年に発見された。
火星の赤道から見るフォボスは、地球から見た月の3分の1程度の大きさでしかない。
フォボスの軌道は低く、潮汐力によって火星に近づきつつある。
そのピッチは100年あたり1.8mだ。
このままいくと、3000万〜8000万年でフォボスは火星表面に激突するか、分解して火星のリングになる運命にある。
フォボスの密度は非常に小さい。
このためフォボスの内部はスカスカだと考えられている。
「フォボスは中空である」という主張もある。
マーズグローバルサーベイヤーの観測によると、フォボスの表面は厚さ100mほどのレゴリスの微粒子の層で覆われているらしいことが確認された。
フォボスの表面はクレーターに覆われている。
その中でも最大のものがスティックニー[Stickney]だ。
フォボスのサイズは、27×21.6×18.8km程度しかないのに、スティックニーの直径は10kmもある。
このスティックニーは、火星表面から肉眼で確認できるらしい。
なお、スティックニーは、フォボスの発見者ホールの妻の名に由来する。
フォボスはダイモスとともに、スペクトル・反射能・密度がC-タイプ(炭素質タイプ)のアステロイドに非常に似ている。
このことから、フォボスとダイモスは、火星の重力によって捕獲された小惑星だという考え方が根強い。
一般に小惑星が捕獲され衛星になった場合、軌道傾斜角は大きく、離心率も大きくなりがちだ。
フォボスとダイモスは、火星の赤道面を真円に近い軌道で公転しているため、捕獲された小惑星と考えるにはあまりにも行儀がよすぎるという謎も残っている。
フォボス探査
フォボス2号
1988年、ソビエト(当時)の探査機フォボス2号がフォボスに接近した。
フォボス2号はフォボスの画像を38ショット撮影したが、その直後に通信が途絶しミッションは中止になった。
マーズ・エクスプレス
ESAの火星探査機マーズ・エクスプレスは2008年7月23日に、フォボスに93kmの至近距離まで接近した。
このタイミングで、1ピクセルあたり3.7mの高解像度で画像が得られている。
興味深いのは、フォボスの表面に刻み付けられた複数の溝である。
これらの溝は平行に走っている。
フォボスの表面になぜ、平行な溝があるのかは、まったく分かっていない。
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フォボス・グラント
ロシア連邦宇宙局は、中国と共同で2009年にフォボスの探査機フォボス・グラントを打ち上げる予定である。
フォボス・グラントは、フォボスからのサンプルリターンを目指している。
なお、フォボス・グラントの着陸地点はマーズ・エクスプレスによって撮影されている。
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参考文献・サイト
ESA:Phobos-Grunt
Solar System Exploration
2010/11/08