α(アルファ)星のない星座を語る。
α星がない4つの星座
バイエル符号
星座の中で最も明るい星はアルファ星と呼ばれている。
はくちょう座のアルファ星ならデネブ、さそり座のアルファ星ならアンタレスだ。
これは、17世紀にバイエルが全天星図(ウラノメトリア)を作った時、星座ごとに明るさの順にアルファ、ベータ、ガンマとギリシャ文字を与えたことが発端となっている。
これがバイエル符号だ。
このルールには例外も多い。
カストル(2等星)はふたご座のアルファ星だが、ベータ星のポルックス(1等星)の方が明るい。
当時は目視観測であったし、明るさで星を等級別にランク付けしているに過ぎなかった。
このため、明るさの順と言いながら厳密ではないのである。
α星のない4つの星座
さらに重大な例外もある。
アルファ星がない星座が4つ存在するのだ。
じょうぎ座、ほ座、とも座、こじし座にはアルファ星がないのである。
なぜα星がないのか
じょうぎ座
かつて多くの天文学者が独自に星座を考案した時期があった。
星座が乱立したために、星座がお互いに重なり合ってしまったである。
そこで星座の世界標準をつくることになった。
国際天文学連盟が1928年の総会で88星座が制定され、同時に各星座には境界線が定まった。
天球はどの部分をとってみても、かならずどこかの星座の領域なのだ。
境界線を引いた時、じょうぎ座のα星・β星の位置はさそり座の領域に含まれてしまった。
このため、じょうぎ座はα星・β星を失い、元々のじょうぎ座のα星はさそり座N星に、β星はさそり座H星に改名されたのである。
バイエルの時代に星座の境界があいまいだったことも原因の一つと言えるだろう。
ほ座、とも座
国際天文学連盟の総会ではアルゴ座がほ座、とも座、りゅうこつ座、らしんばん座に分割された。
このとき、元々アルゴ座で割り当てられていたα(アルファ)からΩ(オメガ)までの24個のバイエル符号が、3つの星座に引き継がれたのだ。(下表参照)
バイエル記号 | 読み方 | りゅうこつ座 | ほ座 | とも座 |
α | アルファ | ○ | ||
β | ベータ | ○ | ||
γ | ガンマ | ○ | ||
δ | デルタ | ○ | ||
ε | イプシロン | ○ | ||
ζ | ゼータ | ○ | ||
η | エータ | ○ | ||
θ | シータ | ○ | ||
ι | イオタ | ○ | ||
κ | カッパ | ○ | ||
λ | ラムダ | ○ | ||
μ | ミュー | ○ | ||
ν | ニュー | ○ | ||
ξ | クシー | ○ | ||
ο | オミクロン | ○ | ||
π | パイ | ○ | ||
ρ | ロー | ○ | ||
σ | シグマ | ○ | ||
τ | タウ | ○ | ||
υ | ウプシロン | ○ | ||
φ | ファイ | ○ | ||
χ | カイ | ○ | ||
ψ | プシー | ○ | ||
ω | オメガ | ○ |
アルゴ座のアルファ星はそのままりゅうこつ座のアルファとなったのでほ座、とも座にはアルファ星がないのである。
なお、らしんばん座はアルゴ座のなかで最初からバイエル符号がなかった領域だったので、88星座を決定したときに新たにバイエル符号をもらっている。
こじし座
このように現在の88星座を制定するときの影響でアルファ星のない星座が生まれたが、こじし座は事情が異なる。
ヘベリウスがこじし座を設定した後、フランシス・ベイリーがこじし座を収録した星図を発行した。
この星図のなかで、こじし座で最も明る星(46番星)にはバイエル符号が与えられていないが、二番目に明るい星はβ星となっている。
フランシス・ベイリーがα(アルファ)を振り忘れたまま、星図を発行してしまったことが、こじし座にアルファ星がない原因のようだ。
こじし座は小さな星座である。
しかもアルファ星もなければ、神話もない。
気の毒な星座に思えてならない。
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参考文献・サイト
Leo Minor:startales
Puppis:startales
Vela:startales
Norma:startales
2015/08/23