超新星残骸を語る。
超新星残骸とは
質量の大きな恒星は、最後の段階で星全体が大爆発を起こす。
これを超新星という。
超新星の爆発によって四散した物質が空間のガスと衝突し発光している天体が超新星残骸だ。
超新星残骸をSNRと表記する場合もある。
SNRは[Supernova Remnant]の略なのだ。
超新星残骸の特性
新星よりも、はるかに明るいので超新星と言われるが、新星と超新星では発光のメカニズムまったく異なっている。
超新星の爆発は、強烈である。
このときの衝撃を受けているため、超新星残骸は非常に高温である。
この高温のために、超新星残骸は電波・可視光・エックス線といった電磁波を放射しているのである。
エックス線で見たM1(かに星雲) |
ラジオ波(電波)で見たM1(かに星雲) |
可視光で見たM1(かに星雲) |
赤外線で見たM1(かに星雲) |
出展:ESA HUBBLE
超新星残骸の発光の原理
超新星が爆発すると、星を作っていた大量を物質を宇宙に放出する。(下のアニメでは黄色の部分)
放出される物質の速度は光速の1%程度にも達するほど激しい。
放出された物質は、宇宙空間に漂う星間物質と衝突する。
このときに生じる熱で超新星残骸は発光するのである。
衝突の勢いは凄まじい。
このため星間物質はかき集められながら球殻状(下のアニメでは赤色の部分)に広がっていく。
星間物質と衝突するうちに、最初に放出された物質は勢いを失い散り散りになっていく。
やがて超新星残骸は星間物質のみで衝突を繰り返し、広がっていくのである。
下のアニメでは、星を作っていた物質(黄色)が減って、超新星残骸の膨張に巻き込まれた星間物質(赤)が広がっていくのが分かる。
超新星残骸の仕組み
膨張を続ける超新星残骸は、宇宙空間に漂う星間ガスと衝突を繰り返す。
この衝突によってさらに熱が発生するために、超新星残骸は、なおも輝き続けることになる。
超新星残骸は、ほぼ球殻状に広がっていく。
だから、地球から超新星残骸を観測すると、円、または円弧状に見える。
一方でかに星雲(M1)のように形状が不規則なのものもある。
超新星残骸が素材となって再び、恒星が誕生する。
超新星残骸の例
超新星残骸の例として、おうし座のかに星雲(M1)、はくちょう座の網状星雲(NGC6960,NGC6992-5)が有名である。
これらの天体は、爆発時の勢いを保ったまま今もなお、急激な膨張を続けているのだ。
M1 / かに星
M1は、1054年におうし座に出現した超新星の残骸である。
超新星残骸は1731年に発見された。
メシエ天体で唯一の超新星残骸でもある。
中心部でパルサーが発見されている。
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バーナードループ
バーナードループはオリオン座の超新星残骸である。
肉眼では見えないが、オリオン座のほぼ全域を覆っている。
約200万年前に出現した超新星の残骸である。
3C58
3C58は超新星SN1181が残した超新星残骸である。
カシオペヤ座にある。
3C58はクオーク星の候補でもある。
RCW86
RCW86はコンパス座にある超新星残骸である。
西暦185年に超新星SN185が出現し中国で記録された。
この超新星は記録に残る最古の超新星爆発である。
XMMニュートン、チャンドラ等のX線天文衛星の観測によって、RCW86は誕生以来2000年が経過していることが確認された。
この結果、RCW86は超新星SN185の残骸であることが判明した。
SNR1006
SNR1006はおおかみ座にある超新星残骸である。
西暦1006年に超新星SN1006が出現し世界各地で記録された。
SNR1006の実直径は60光年、太陽系から7000光年の距離にある。
G1.9+0.3
約140年前に出現した(らしい)超新星が残した超新星残骸である。
この超新星を目撃した記録はなぜか残っていない。
半径1.3光年、太陽系から2万5000光年の距離にある。
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参考文献・サイト
SEDS:THE MESSIER CATALOG
Introduction to Supernova Remnants
New evidence links stellar remains to oldest recorded supernova
RCW 86: New Evidence Links Stellar Remains to Oldest Recorded Supernova
Astronomy Picture of the Day
Chandra Supernova Remnant Catalog
2008/02/03
2009/11/23