かに星雲 / M1(メシエ1)を語る。
M1(メシエ1) / かに星雲とは
M1(かに星雲):中心部にはパルサーがある。
出展:ESA HUBBLE
かに星雲(M1/メシエ1)は1054年におうし座に出現した超新星の残骸で、ある。
爆発の勢いは現在も衰えることなく、かに星雲は秒速1000キロメートル以上のスピードでこの瞬間も広がっており、実際のサイズは5〜10光年にも及ぶ。
メシエカタログの1番目に収録されていると同時に、メシエカタログで唯一の超新星残骸で、地球から約6500光年の距離にある。
電波源としてはおうし座Aという名称もある。
元々、この星雲は1731年にイギリスのアマチュア天文家のジョン・ベヴィスによって発見された。
その後のウィリアム・パーソンズの観測によって細かな構造が明らかになると、その形がカニの姿をイメージさせることや、ロス卿[Lord Rosse]の観測でM1がカニに似ていることが報告されたためかに星雲と呼ばれるようになった。
高エネルギーの電子が磁場中を進むときにカーブして光を発する。これをシンクロトロン放射と呼ぶ。
天体の光でシンクロトロン放射が確認されたのはかに星雲が最初の例である。
かに星雲の中心には超新星のなれの果てであるパルサーがある。
このパルサーは直径約10キロメートル程度でありながら太陽程度の質量を持ち、かにパルサーと呼ばれている。
かにパルサーは電波だけでなく、強力なガンマ線も放出しています。またガンマ線を放射すれば同時にエックス線も放射しそうだが強力なエックス線は観測されていない。
パルサーがこれほど強力なガンマ線を放射するメカニズムは明らかになっていない。
スペクトルや強度が非常に安定しているため、エックス線やガンマ線での天体観測の際に観測機材のキャリブレーション(調整)として利用されている。
かに星雲は、可視光だけでなく、エックス線や電波など広い範囲の電磁波電磁波を放っている。
エックス線で見たM1(かに星雲) |
ラジオ波(電波)で見たM1(かに星雲) |
可視光で見たM1(かに星雲) |
赤外線で見たM1(かに星雲) |
様々な電磁波で観測したM1(かに星雲)
出展:ESA HUBBLE
タイタンとかに星雲
2003年1月5日、土星の衛星タイタンがかに星雲を隠す現象が観測された。
タイタンの大気は厚く濃いため、かに星雲から来るエックス線はタイタンの大気を通過するときに減衰する(強度が弱くなる)はずだ。
この瞬間を狙ってエックス線天文衛星チャンドラがエックス線の強度を観測した。
減衰された量を測定すれば、タイタンの大気のデータが得られる。
この観測の結果、タイタンの大気の厚さは約880キロメートルと算出された。
この値は1980年に実施されたボイジャー1号による調査より10〜15%大気が厚いため、タイタンの大気が膨張していた可能性が考えられた。
かに星雲と元天体
かに星雲の元になった恒星は太陽質量の8〜11倍の恒星であったことが計算から分っている。
一方で、現在のかに星雲のガス雲の質量は光の量から太陽3個分、中性子星の質量は太陽2個分と見積もられてる。
これを合算しても太陽5個分となり、もともとの恒星の質量の理論値よりも少なくなってしまうが、足りない分の質量がどこに消えたのかは、まったく分っていない。
このギャップを説明するために、超新星爆発に至るまでの期間、この星は恒星風によって大量の物質を宇宙空間に放出してしまったという仮説がある。
この説が正しいなら、かに星雲の周囲には、散逸した物質がガス状に広がっているはずであるが、そのようなガスは、まだ発見されていない。
カニ星雲と不活性ガス化合物
この写真は、ハッブル宇宙望遠鏡(可視光線)と、ESAのハーシェル宇宙望遠鏡(赤外線)でそれぞれ撮影された画像を合成したものである。
出展:NASA Crab Nebula, as Seen by Herschel and Hubble
ハーシェル宇宙望遠鏡での撮影で、カニ星雲の中にアルゴンのイオン化合物が発見された。
宇宙で不活性ガスの化合物が発見されたのは、これが初である。
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参考文献・サイト
SEDS:THE MESSIER CATALOG
NASA:Crab Nebula
NASA:The Crab Nebula
NASA:Crab Nebula: A Cosmic ' Generator' Producing Energy at a Rate Equal to 100,000 Suns
NASA:NASA's Fermi Spots 'Superflares' in the Crab Nebula
NASA:Titan casts revealing shadow
2009/12/22
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