カイパーベルトを語る。
カイパーベルトとは
かつて、冥王星が太陽系の果てと考えられていた時期があった。
ところが、観測技術の向上で暗い天体が撮影可能になると、冥王星の近辺やそれよりも遠方に、小型の天体がウジャウジャしていることが分かってきた。
小型サイズの無数の天体群は、海王星の外周部にリング状の帯となって太陽系を取り囲んでいる。
このリング状の帯をカイパーベルト、またはエッジワース・カイパーベルトという。
カイパーベルトを構成する天体が、カイパーベルト天体[KBO:Kuiper Belt Object]だ。
エッジワース・カイパーベルト天体[EKBO]と呼ぶ場合もある。
さらに、縮めてEKBOをエクボともいう。
一時期、冥王星は惑星と思われていたが、現在はカイパーベルト天体に分類されている。
カイパーベルト仮説
カイパーベルトは、予測されていた
カイパーベルトは、たまたま発見されたのではない。
1950年代に、カイパーベルトの存在は、すでに予測されていたのである。
ただ、観測する技術が伴っていなかったのだ。
なぜ、カイパーベルトの存在が予測されたのか?
まず、そこから解説しよう。
太陽から遠方にある彗星は、凍りついているために尾を持たない。
ところが太陽に接近すると熱で揮発分が蒸発し尾が生じる。
周期彗星は、太陽に接近するたびに揮発分を失うため、やがては尾がなくなってしまうと考えられる。
太陽系が誕生してから45億年が経過した。
この時間の長さから考えると、すべての短期彗星はすでに揮発分を蒸発しつくして存在しなくなっていてもいいはずだ。
ところが、なぜ多くの短期彗星が、依然として太陽系内に健在なのだろうか?
この疑問を追及したエッジワースおよびカイパーは、太陽系の外周に彗星の源があり、少しずつ太陽系内に彗星が供給されているためだと考えた。
短期彗星の軌道は黄道面に沿っている。
だから、彗星の源は太陽系の外側をリング状に取り囲んでいると予想された。
これが、エッジワース・カイパーベルトである。
カイパーベルトの発見
エッジワース・カイパーベルトのアイデアが発表された1951年である。
この時代、カイパーベルトを直接確かめる手段はないため、単なる仮説の域を出ることはなかった。
このときすでに冥王星は発見されていたが、惑星と認識されていたので、冥王星がカイパーベルト天体の一つであると想像する人はいなかった。
1992年、冥王星とほぼ同じ距離(約40AU)に、160km程度のサイズの天体「1992QB1」が発見された。
太陽系の外れで小惑星が確認されたことは驚きではあったが、これ以後、小惑星サイズの天体が続々と太陽系の辺縁部で発見された。
これらの小型天体は、太陽系の外側にリング状に分布していることが判明した。
これこそが、40年前に予測されていたカイパーベルトだった。
1992QB1の発見がきっかけとなって、カイパーベルトの実在が確証されのである。
カイパーベルトの特性
カイパーベルト天体の種類
カイパーベルト天体の一部は、海王星の軌道と共鳴状態にある。
共鳴状態にあるカイパーベルト天体の一群をトゥーティノ族[Twotino]と呼ぶ。
共鳴の比率には1:2、2:3、2:5等が知られている。
特に2:3で海王星と共鳴しているカイパーベルト天体の一群を、冥王星族[plutions]と呼ぶ。
冥王星自体が2:3で共鳴しているからだ。
また、1:1で共鳴する天体群が海王星軌道上のラグランジュポイントに存在する。
これらを海王星トロヤ群と呼ぶ。
海王星トロヤ群を、カイパーベルト天体に含めない場合もある。
これに対し、共鳴していないカイパーベルト天体の一群をキュビワノ族[Cubewano]という。
最初に発見された1992QB1の「キュービーワン」から派生してキュビワノと命名されたのだ。
トゥーティノ族よりも、キュビワノ族の方が圧倒的に多数である。
カイパーベルトと惑星の定義
カイパーベルト天体の種々の特性が判明するにつれ、冥王星はカイパーベルト天体の一つに過ぎないことが分かってきた。
2005年に冥王星を超えるサイズのカイパーベルト天体エリス[Eris]が発見された。
冥王星が惑星なら、それより大きいエリスも惑星に分類されるべきだ。
そのような主張も現れた。
カイパーベルト天体は無数にある。
今後も冥王星より大きいカイパーベルト天体は、多く発見されるだろう。
それらをすべて惑星と見なしたら、混乱は大きくなる。
エリスの発見を機に、惑星の定義がIAUで見直された。
その結果、定義に適合できない冥王星は惑星から除外されたのだ。
カイパーベルトの外側は?
大型惑星、特に海王星の引力の影響でカイパーベルトから弾き飛ばされた天体が、カイパーベルトの外側に散在している。
この領域を散乱ディスクといい、これに含まれる天体を散乱ディスク天体と呼ぶ。
これとは反対に、カイパーベルトから内側へ弾き飛ばされた天体がケンタウルス族[centaur]である。
カイパーベルト天体、散乱ディスク天体、およびオールトの雲に含まれる天体を総称して太陽系外縁天体という。
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参考文献・サイト
Trans-Neptunian object
Kuiper Belt Page
Kuiper Belt
2006/08/20
2008/11/20