ホーキング織野の

サラリーマン、宇宙る。

X線天文学を語る。

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エックス線天文学とは

エックス線

エックス線は目に見えないが、物体を透過する光である。
たとえば、病院で利用されるレントゲン撮影はエックス線を利用している。
レントゲン撮影では、人工的にエックス線を発生させ人体を通過させる。



体内には、エックス線を吸収しやすい部分と、吸収せず通過させてしまう部分がある。
このため、体内を通過してきたエックス線は、吸収しやすい/しにくい部分の分布によって画像を作るのだ。



エックス線は透過する能力を持つので、空港の手荷物検査などでも、外側から中を見るために利用されている。





エックス線天文学

恒星が目に見えるのは、目に見える光(可視光)を放射しているからである。
一方で、恒星は目に見えない電磁波も出している。
たとえば、赤外線、紫外線、ガンマ線、エックス線なのだ。



光学望遠鏡で天体を観測するということは、天体の光(可視光)を観測することである。
光学望遠鏡は、様々な電磁波の中から、可視光だけをキャッチしているにすぎない。
目に見える天体だけを相手にするのが、光学望遠鏡であり、可視光天文学である。



可視光、電波、X線(エックス線)、ガンマ線は、すべて電磁波で波長が異なっているだけである。
赤外線、紫外線、ガンマ線、エックス線は人間の目には見えないが、特定の波長をキャッチする専用の観測機器を使えばこれら電磁波を見ることができる。



宇宙から来るX線(エックス線)を観測する研究分野をX線天文学という。

普段は可視光で見慣れた宇宙を、エックス線で見たらどう見えるのだろうか?
X線天文学は、この疑問に答える天文学なのである。



エックス線の色と硬さ

エックス線の性質を色や硬さで表現する場合がある。




X線の色

可視光線には色がある。
可視光線の波長の違いが、赤、黄、緑、青など色の違いとなって現れる。
波長が短ければ青、長ければ赤にある。



X線にも波長の長いX線や、短いX線もある。
波長の長いX線を赤いX線、短いX線を青いX線と表現する場合がある。




X線の硬さ

透過力の強いX線を硬いX線、透過性の弱いX線を軟らかいX線という。
硬いX線は波長は短く、軟らかいX線は波長が長い。






エックス線観測の方法

エックス線は通過力があるが、どんなに長い距離でも最後まで透過することはできない。
物質中を通過するうちに徐々に減衰する(弱まっていく)のである。
宇宙から来るエックス線は、地球大気を通過するうちに減衰するので、地表には届かない。



過度のエックス線は人体に有害である。
このため、病院のレントゲン設備は厳重な安全対策が施されているのである。
もし、地球の大気でエックス線が減衰しなかったら、地上の生命は生存することができなくなるだろう。



ところが、エックス線天文学にとっては大気は邪魔な存在になる。
「あの星はどんなエックス線を放っているのだろう?」と思っても、地上でそのエックス線を捉えることができないからだ。



そこで、天体をエックス線で観測するためには、観測機器を大気の影響のない高空や大気圏外に置かなければならなくなる。
このためロケット、気球、人工衛星が利用されている。




ロケットによるX線観測

先端にX線観測機器を装備したロケットを大気圏外に打ち上げて観測する方法がある。
この方法は1949年に初めて実施され、太陽がX線を放射していることが発見された。
1962年には、X線観測機器を装備したエアロビーロケットが打ち上げられ、エックス線源さそり座X-1を発見した。



打ち上げたロケットは、宇宙にとどまるのではなく、地球に戻ってくる。
このため観測時間や観測できる範囲は限られてしまう欠点がある。




気球によるX線観測

気球はせいぜい40キロメートル上空までしか上がることができない。
しかし、この高度であれば地球大気の全質量の99.9%以上よりも上空にいるため、宇宙からのX線を捉えることができるのだ。
南極で実施されたHIREGSが有名である。




人工衛星によるX線観測

今日、人工衛星によるX線観測が、エックス線天文学の主流になっている。
X線観測機器を地球周回軌道にのせれば、数年〜10年の期間で観測が持続できるのだ。
このような観測衛星を、エックス線天文衛星、エックス線宇宙望遠鏡と呼ぶ。




エックス線天文衛星

ウフル(SAS-1)

世界初のエックス線天文衛星である。1970年12月に打ち上げられた。



コペルニクス

1972年8月に打ち上げられた。



ANS

オランダの衛星であるが、米国のロケットで1974年8月に打ち上げられた。



エアリアル-5

イギリスの衛星であるが、米国のロケットで1972年10月に打ち上げられた。



SAS-3

1975年5月に打ち上げられた。



HEAO-1

1977年8月に打ち上げられた。



アインシュタイン(HEAO-2)

1978年11月に打ち上げられた。
エックス線反射望遠鏡を搭載した初の衛星である。



はくちょう

日本で最初のエックス線天文衛星である。
(正式名称:第4号科学衛星CORSA-b)
1979年2月21日に打ち上げられ、1985年4月15日に大気圏に突入し運用が終了した。



HEAO-3

1979年9月に打ち上げられた。



てんま

日本で2番目のエックス線天文衛星である。
(正式名称:第8号科学衛星ASTRO-B)

蛍光比例計数管を搭載した初の衛星である。

1983年2月20日に打ち上げられ、1988年12月17日に運用が完了した。
その後、1989年1月19日大気圏に突入し消滅した。



EXSOSAT

1983年5月に打ち上げられた。



ぎんが

日本で3番目のエックス線天文衛星である。
(正式名称:第11号科学衛星ASTRO-C)

1987年2月5日に打ち上げられ、1991年11月1日に大気圏に突入し運用が終了した。



グラナート

1989年12月に打ち上げられた。



レントゲン(ROSAT)

1990年6月に打ち上げられた。



BBXRT

1990年12月に打ち上げられた。



DXS

1993年1月に打ち上げられた。



あすか

日本で4番目のエックス線天文衛星である。
(正式名称:第15号科学衛星ASTRO-D)

X線望遠鏡[XRT]、X線CCDカメラ[SIS]、撮像型蛍光比例計数管[GIS]を搭載している。
1993年2月20日にM-3SIIロケット7号機で打ち上げられ、超新星SN1993JからのX線を捕捉するなどの成果を得た。

2001年3月2日に大気圏に突入し運用が完了した。



ALEXIS

1993年4月に打ち上げられた。



RXTE

1995年12月に打ち上げられた。



ベッポ・サックス/BeppoSAX

1996年4月に打ち上げられた。
1997年にガンマ線バーストに伴うアフターグローを発見した。



チャンドラ

1999年7月に打ち上げられた。



XMM-ニュートン

1999年12月に打ち上げられた。



HETE-2

2000年10月に打ち上げられた。



すざく

日本で5番目のエックス線天文衛星である。
(正式名称:第23号科学衛星ASTRO-EII)

X線望遠鏡[XRT]、高分解能X線分光器[XRS]、X線CCDカメラ[XIS]、硬X線検出器[HXD]が搭載されている。

従来のX線天文衛星のエネルギー帯域は10keV程度であったが、「すざく」は 700keVのエネルギー帯域を持つ。

2005年7月10日にM-Vロケット6号機で打ち上げられた。
2008年10月現在、正常な運用が続いている。



ASTRO-H

第26号科学衛星ASTRO-Hは、日本で計画中のエックス線天文衛星である。
2013年の打ち上げを目指している。




宇宙のエックス線源

宇宙では、次のような天体がX線源になっている。

エックス線源
銀河団
活動銀河中心核(AGN)
超新星残骸(SNR)かに星雲
白色矮星恒星の連星系
中性子星恒星の連星系さそり座X-1
ブラックホール恒星の連星系はくちょう座X-1
背景放射CXB(宇宙X線背景放射)




エックス線天文学の歴史

物体は温度に応じた電磁波を放射する。
約3000度の物体が放射するのは赤外線、約6000度なら可視光線だ。



太陽の表面温度は約6000度である。
だから太陽は可視光線を放っているのである。



約3000度の恒星は赤外線を出す。
この場合は赤色矮星になる。



もしエックス線を放射する恒星があるとしたら、その温度は1000万度を超えているはずである。
そんな高温の恒星は存在できない。
そのため、1960年までの時代、宇宙にはX源はないと考えたれてきた。



1962年、さそり座X-1が発見され、宇宙にもX線源が存在することが明らかになった。

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参考文献・サイト

武部俊一「宇宙開発の50年」朝日新聞社,2007年
小出勝二「X線で探る宇宙」培風館,1992年
X-rays
The Rossi X-ray Timing Explorer
X-ray Astronomy Satellites & Missions
ISAS:X線天文学の予備知識
History of X-ray Astronomy
JAXA
The Story of SCO X1
JAXA:果てしない宇宙の謎にせまる
JAXA:高橋・国分研究室

2008/07/05
2009/03/20
2010/05/29



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