いるか座を語る。
いるか座は、海の神ポセイドンの使者のイルカに由来する。
星がひし形に配列した形が特色である。
この菱形の部分は非常に目を引くため、各地で独自の呼び方が伝わっている。
例えば、日本では「菱星」、アラビア地方では「(乗用の)ラクダ」、 西洋圏ではヨブの棺[Job's Coffin]と読んでいる。
ヨブとは、旧約聖書ヨブ記に登場する人物である。
トレミーの48星座は、2世紀以来使われてきた。
18世紀に、その中のアルゴ座がラカイユによって分割された。
いるか座を含む残りの47星座は、すべて現在の88星座に引き継がれている。
いるか座の主な恒星
スアロキン[α Del]
いるか座のα星をスアロキンという。
241光年の距離にある3.8等の青白い恒星である。
いるか座では、α星よりもβ星が0.3等だけ明るい。
6重連星である。
ロタネブ[β Del]
いるか座で最も明るい星がβ星のロタネブだ。
97光年の距離にある3.5等の白い恒星である。
いるか座γ [γ Del]
101光年の距離にある4.3等と5.2等の連星である。
小口径の天体望遠鏡で楽に分離できる。
F型星の周囲をK型の伴星が公転する。
伴星の周囲には惑星があるらしい。
いるか座δ [δ Del]
いるか座で5番目に明るい星がδ星だ。
太陽系から203光年の距離にあるA型星である。
いるか座δはたて座デルタ型の変光星でもある。
いるか座ε [ε Del]
いるか座で3番目に明るい星がε星だ。
太陽系から358光年の距離にあるB型星である。
いるか座δはデネブ・ダルフィムという固有名も持つ。「いるかの尾」という意味だ。
スアロキンとロタネブの語源
いるか座のα星をスアロキン、β星をロタネブという。
近代になって命名された固有名であるが、その意味は謎であった。
二つの星の固有名が、パレルモ天文台が発行した1814年の星図に初めて登場することから、この謎を解くヒントになった。
スアロキン(Sualocin)、ロタネブ(Rotanev)を逆から読むと、パレルモ天文台長の助手の氏名になるのである。
なお、パレルモ天文台は、準惑星ケレスを発見した天文台である。
いるか座の主な星雲・星団
いるか座にはメシエ天体が一つもない。
NGC6891
NGC6891は、わし座との境界近くにある惑星状星雲である。
太陽系から7200光年の距離にある。
NGC6905
NGC6905は、いるか座の惑星状星雲である。
太陽系から4700光年の距離にある。
NGC6934
NGC6934は、いるか座の球状星団である。
ウイリアム・ハーシェルによって1785年に発見された。
太陽系から5万1200光年の距離にある。
NGC7006
NGC7006は、いるか座の球状星団である。
太陽系から11万3000光年の距離にある。
いるか座のその他の天体
いるか座HR [HR Del]
1967年にいるか座に出現した新星である。
ジョージ・オルコック[George Alcock]が発見した。
なお、オルコック氏は天文学への貢献により、大英帝国勲章を受けた。
小惑星オルコック(3174)にその名を残している。
いるか座R [R Del]
いるか座Rはミラ型の変光星である。
7.6から13.8等級の範囲で変光する。
いるか座新星2013 [V339 Del]
リチウムはビッグバン時に少量が生成され、残りは超新星爆発や宇宙線と星間物質の衝突、新星爆発で生じると考えられてきた。
すばる望遠鏡がいるか座新星2013を観測したところ、ベリリウムの同位体が発見された。
ベリリウムの同位体は半減期53日でリチウムに変化することが分かっている。
これにより、新星爆発でリチウムが生じることが観測によって証明された。
いるか座γ [γ Del]
二重星である。小口径で楽に分離できる。
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参考文献・サイト
Constellations
Star Tales
BBC:Constellations
Royal Astronomical Society of New Zealand
すばる望遠鏡:新星爆発は宇宙のリチウム合成工場だった
2008/05/13
2010/05/31
2014/03/16