歳差を語る。
歳差とは
コマは回転が弱まると軸が傾く。
傾いた軸は、リングを描きながらゆっくりと、首を振るように回転する。
コマに限らず自転している物体の回転軸は、首を振るように円形を描く。
この現象を歳差と呼ぶ。
地球も歳差を持っている。
つまり、地球の自転軸の向きは刻々と変化しているのだ。
歳差の影響で地球の自転軸は約2万5800年で一周する。
地球の歳差の性質
歳差の性質
地球の自転軸にも歳差がある。
このため、自転軸の向きが首を振るように回転するのだ。
地球の歳差を実感することはまず無理だ。
首を一周振るのに約2万5800年もかかるので、人間の感覚では変化をキャッチできないのだ。
歳差の影響によって、天の赤道も変化する。
このため、春分点、秋分点は少しずつ西へ西へとずれていく。
現在、春分点はおひつじ座であるが、1000年後にはみずがめ座に入ることになる。
歳差と北極星
歳差によって、地軸が指し示す天球上の位置も変化する。
現在、地軸はこぐま座α星(ポラリス)を指しているので、ポラリスが天球の回転の中心になっているように見える。
このためポラリスは北極星と呼ばれている。
5000年前には、りゅう座α星が北極星であったが、1万2000年後にはこと座のベガが北極星になる。
歳差によって地軸が描く円の中心を、黄道北極と呼ぶ。
歳差と太陽年
春分点を出た太陽が、再び春分点に戻ってくるまでの時間を太陽年(または回帰年)という。
太陽年(回帰年)の長さは、約365.2424日で、カレンダーの1年はこれを基準にしている。
太陽が黄道上を移動している間にも、地球の歳差は刻々と進む。
このため、春分点を出た太陽が再び春分点に戻って来たとき、その春分点は1年前の春分点よりも手前に来ていることになる。
グラウンドを一周を走るとき、ゴールが少しずつ手前に近づいてくるイメージだ。
太陽が天球を一周するのが1年と思いがちだが、実際はゴールである春分点が少し手前に来るので360度に少し足りない。
これに対し、恒星に対して太陽が黄道上を移動してもどるまでの時間を恒星年という。
つまり、太陽が天球を360度回る時間が、恒星年である。
恒星年は、春分点とは無関係(歳差とは無関係)であるため、ゴールが少しずつ手前に近づいてくることはない。
このため、恒星年は、太陽年(回帰年)よりも20分24秒ほど長くなっている。
歳差の発見の歴史
歳差は紀元前150年頃にヒッパルコスによって発見された。
ヒッパルコスは、ギリシャの天文学者である。
ヒッパルコスは、恒星の位置を、150年古い時代の星表と比較しているうちに、恒星の黄経がすべて同一方向にずれていることに気がついた。
黄経の基準は春分点である。
つまり、春分点が刻々と移動していることを発見したのである。
ただし、地球の首振り(歳差)まで見抜いていたかは定かでない。
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参考文献・サイト
2008/03/08